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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

4章-5

2006-10-17-Tue-00:39
「ば…かな…」
 もうもうと上がる煙。
 止まる時間。
「オマエ…」
 呆然とした眼差しで見つめる先は…
「…一つ…」
 己の胸に刺さる刃。
「無茶をするな」
 男の柔らかい声が、目の前の存在に向けられる。
「一つ、質問したい事があります」
 額から落ちる、冷たい汗。
 鼓動を一つ打つたびに、揺れる、銀色の光。
「…た…まき…」
 視界にすら映らなかった。
 だから、力を弱める事もしなかった。
 男を殺すつもりで、少女を取り戻すつもりで、全ての力を込めた一撃…だったはずだ。
 なのに…
「…なんで」
 声が掠れるのは、驚愕のためだけではない。
 深々と己の胸に埋まる刃は、少女が持つ白刃のソレ。
 刃に朱が絡み、少女の指を濡らす。
 男と自分の間に、割って入った少女。
 風の刃は少女の腹部を貫き、少女の刃は己を貫いた。一見すれば、合い打ちのようなソレ。
 己からは見えなくとも、少女の背には男が発した力が当たっているはずだ。
 だが、少女は顔色一つ変えず、真弘を見据える。
 痛みがないわけではないだろう。零れるお互いの血は、それぞれの衣類に血の染みをつくり、唇から零れる呼吸は、荒い。
「オマエが弱いからだろう?」
 嘲るような声音。
 男の言葉は、先ほどの己の問いに対する答えなのだろうが、だが、そんな事にかまってはいられなかった。
 一歩、少女に近寄る。
 肉を貫く感触。
 走り抜ける激痛。
 それでも、少女へと近寄り…
「…センパイの、望みは…なんですか?」
 不釣合いなほど淡々と、少女の口から言葉が零れる。
 鼻につく血臭の中には、己の血も入っているのだろう。今も尚、零れる赤は足元に、染みを作っているのだから。
「…珠紀」
 指を伸ばす。
 向けられた眼差しは欠片も揺らがず、己が触れた少女の頬に赤い線が走り…
「もう一度、聞きます。…………先輩の…望みは、何ですか?」
 記憶のない記憶。
 問われた覚えのない問い。
 まるで、カンニングペーパーを用意されたかのように、己の口が動き…
「チ…カラを」
「…ウソツキ」
 心臓が、脈打つ。
 刺すような眼差し。
 己を見つめる、その瞳。
「だから、言っただろう?玉依。そいつは…」
「貴方は、黙っていてください」
 硬質な声音。
「嘘じゃ…ねぇ、俺様は…」
「力があっても、何も変わらない」
 響く、少女の声。
 瞳の中に己だけが映る。
「力だけを求めても、何も救えないって…先輩は、知っているはずです!」
 跳ねる鼓動。
「必要なのは…そんなものじゃなくて…」
 くしゃりと歪む表情。
 望みは…
 いつから、力を求めるようになったのだろう。
 力を求め、その末路を知っていながらも、何故、これほどに…
 少女の両目から、涙が零れているように見えて、そっと親指で擦る。
 濡れた感触はない。
 だが…
「……玉依」
 揺れる空気。
 交じり合っていたものが、僅かに離れる。
 心の中。
 もっと奥。
 己の一部となりかけていたそれ。
「……私は、知っているから」
 光る刀身。
 同時に、真弘の体が輝き…
「センパイが、強い事…誰よりも知っているから」
 抜けていく力。
 今、ようやく解る。
 己の中に在る、他者。
 近く、遠いその存在。
 あの時から見始めた夢と、心の奥底に根付いたこれは…
「ま…さか」
 男の口角が上がる。
「だからっ」
 広がる光は、舞台全体を覆う程に広がり…




「もう、先輩に手出しはさせないっ!!」

←4章-4 | 4章-6→

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あとがき。
書き分けが…難しい。男はオリキャラです。オリキャラだけど、オリキャラじゃないです。…格好良い、珠紀が書きたかったんです。

4章-4

2006-10-16-Mon-05:03
 空を切る拳。
 柔らかな感触が伝わるはずだった。
 不本意だが…それでも、彼女をここに置いておけなかったから…
 彼女を止めたかったから…

 だが…


「守護者が、聞いて呆れる」
 聞こえて来たのは、見知らぬ声。
 摑まれる手首。
 己に落ちる影。
 珠紀の目の前に、まるで、護るように立っているその姿は…
「誰だ…テメェ」
 奥歯が鳴る。
 険しくなる真弘の目つきに反して、どこか面白がるような表情を浮かべる青年。
 乱雑に切られた髪は、闇よりも尚黒く、血が通っていないとすら思えるほど白い肌。
 だが、何よりも青年を印象付けるのは…
「私は、貴方を呼んだつもりはないです…」
 青年の背から聞こえるのは、珠紀の声。
 忌々しい事に、大蛇と同じくらいある長身に隠れ、珠紀の姿は見えない。
 だが、顔は見えなくとも声で解る。
 珠紀にとっても、目の前のこの存在は歓迎するべきものではなく…
「呼ばれなくとも、主の身を護るために現れるのは当然だとは思わないのか?」
「私は、それを望んでいません」
 きっぱりと言い切る少女の声に、青年は瞳を細める。
 だが…真弘の手首は掴んだまま…
「オイコラ、俺様を無視して話ししてんじゃ、ネェ・ヨ」
 語尾と同時にもう片手を相手の腹部へと押し付け…
 弾ける力。
 爆風に押され、後方に下がりながらも痺れる手首にもう片手を添える。
 手ごたえはあった。
 咄嗟に珠紀を探すように、周囲に視線を走らせ…
「どこを、見ているんだ?」
 すぐ耳横で聞こえる声。
「な…!?…ッ!!」
 吹き飛ぶ体。
 いや、吹き飛んだのは…体では無く…
 足元に落ちるおびただしい量の血。
 熱を持った肩。
 だらりとぶら下がった腕は、どんなに力を入れても動かない。
「……原型を留めたか。…運が良い」
 暗に、腕を吹き飛ばすつもりだったと告げながら、男が一歩真弘に近寄る。
「ずいぶんとオイタをしてくれたからな…」
 向けられる手。
 そこに力が集まって行くのが解る。
 避けなければいけない。
 生き残るならば、逃げなければいけない。
 だが…
 男の背に、珠紀の姿が見える。
「置いてなんて…いけるかよ」
 手を取って、抱きしめて、何者からも護るのは、自分だったはずだ。
 目の前の男などでは…断じて…無い。
 一歩踏み出す。
「…ざ、けんじゃねぇぞっ!」
 力の入る膝。
 片腕が動かなかろうが、引くわけには行かない。
「死ぬつもりか?…ならば…」
 力の塊に手のひらを向ける。
「…死ね」
 声と同時に、力が弾けた。
 

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あとがき。

誰か、私に文章力を下さい。4章は6話で終了…するはず?

4章-3

2006-10-15-Sun-02:25
「………センパイ」
 舞台に手をかけ、上がる。
 客席に反して、染み一つないその場所。
 艶やかなその板は、篝火の光を受け、幻想的な色合いをかもし出しており…
「珠紀……ここは、危険だ」
 目の前に居るのは、巫女装束を着けた、己の良く知る少女。
 真弘が舞台に上がると同時に止まった舞。
 刃は、もう片方の手と同じく横に下ろされており…
「危険?」
「あぁ。オマエの場所からでも、見えてるだろ?何かに攻撃を受けている。オマエも早く…」
 弧を描く唇。
 ゾワリ…と背を這う、この感覚は…
「本当は…解っていますよね?先輩?」
 ゆっくりと、珠紀の腕が動く。
 向けられる刃の切っ先。
「た…まき?」
「私を…どこに、連れ出そうとしているんですか?」
 己の喉から数ミリ。
 珠紀の腕が僅かでも震えれば、その肌から赤い血が零れるだろう。
 誰かに操られている…わけではない。
 その眼差しは正常そのもの。
 ならば何故、彼女は自分に刃を向けるのか…
「ふざけるのも…」
「ふざけていると、思っているんですか?」
 思ってはいない。
 ふざけて、こんな事が出来る人間ではない事は、自分が一番良く知っている。
 己の眼差しが険しくなっていくのを自覚する。
 手のひらを、強く握り…
「………本気だってんなら、尚更だ。オマエをここから、連れ出す!」
 力が…膨らむ。
 広がる翼。
 一瞬…そう、僅か数秒。
 珠紀の眼差しに陰りが現れ…消える。
「では…」
 珠紀の腕が横に一閃。
 咄嗟に後ろへ下がった真弘の髪が、数本、風と共に舞う。
「殺すつもりで、来るならば…万が一という事もあるかもしれませんね」
 硬質な声音。
 向けられる殺気。
 真弘だから解る。
 彼女は本気で自分を殺そうとしている。
 何故…
 どうして…
 尋ねたい事なら山ほどある。だが、それ以前に…
 体が…動いた…

 ギィン

 光が弾ける。
 重みなどないように、滑らかな線を描き向かう光を風の塊で受け止める。
 闘うことなど、出来なかったはずだ…
 少なくとも…自分の知る、彼女は…
「今更、何を迷っているんですか?」
 聞こえる声音は、思ったよりも近く…
「ク…ソッ」
 とっさに横へ飛び、風の切る音を避ける。
 完全に避け切れなかった翼の先が切られ…
 痛みなど、感じている暇はない。
 せめて、気絶させる事が出来れば…
「女を殴る趣味はねぇんだがな」
「殴れるとでも?」
 再び交わす、刃と力。
 弾ける光。
 追いかけてくる刃は、まるで何かを狙っているかのように、執拗に真弘の胸…その奥、脈打つ心臓を狙い繰り出される。
「思って…いるさ、オマエを護るためならな!」
 珠紀の動きが一瞬止まる。
 揺れる眼差し。
 自分が良く知る…
「悪ィ…」
 言葉と共に、拳を相手の鳩尾へ…… 

←4章-2 | 4章-4→

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あとがき。
 …戦闘シーンを上手く書きたい。

 



4章-2

2006-10-14-Sat-13:58
 家を飛び出し、力を使いながら真弘は沈んでいく夕日を見つめ、とある場所に向かって走っていた。
 近い心臓。
 途切れる呼吸。
 何故これほどに急いでいるのか、そんな事は自分にすら解らない。
 だが、理屈よりも何よりも、ただ、走れと…
 心が悲鳴を上げていた。
 背を押す風。
 必死に動かす両足。
「…ンでだよ」
 低い声は掠れ、額から落ちてくる汗を腕で拭い、木々を縫いながらその場所まで走る。
 空気を揺るがす太鼓の音。
 風に乗って聞こえる笛の音。
 それは、目指す場所が近い事を示しており。


 ドクン



 一瞬にして変わる空気。


 ドクン


 一瞬にして下がる体温。
「…待てよ」
 先ほどとは違う意味で、声が掠れる。

 空気を揺るがす太鼓の音。

 ヒビカナイ

 風に乗って聞こえる笛の音。

 キコエナイ

 変わりに…
「な…ンで」
 開ける視界。
 煌々と輝く篝火。
 鼻につく…この匂いは…
「珠紀ィ!」
 この匂いを知っている。
 この気配を知っている。
 騒めく木々。
 擦れあう草木。
 一瞬にしてこの世とあの世を繋ぐ、この感覚は…
 止まる足。
 入り口に2箇所。
 並ぶ椅子と、その向こうには舞台。
 四隅に添えられた篝火は消える事なく、舞台の中央で舞う少女が一人。
 腕を動かすたびに、光が反射しているのは、少女が手に持つ刀のせいなのだろう。
 見るものを全て魅了する…舞。
 魂鎮め。霊鎮めの舞。
 だが…
「た…すけ…」
 真弘のズボンの裾が握られる。
 聞いた事のある声。
 守護者の一族のうちの誰かだろう。
 名は知らない。
 真弘は立ち止まったまま。
 座っても、飛んでもいない。
 だが、握られているのは、ズボンの裾。
 ぎこちなく視線を下ろせば、ズボンの裾を掴んでいた人物と視線が合う。
 頭から血を流し、いや、頭からだけではない。
 体、足、よく見れば己のズボンを掴むその腕にすら傷を負っているように見える。
「退け…」
 錆びた鉄の匂い。
 周りを見渡せば、ここだけではなく、周りの動くもの全てが血にまみれ、倒れている。
 まるで地獄絵図のような現状にもかかわらず、一種、神聖な場所に見えるのは…
「珠紀…」
 中央で舞う少女の姿があるせいだからだろうか。
 真弘は、己のズボンを掴む手を乱暴に振り払うと、倒れる人垣を飛び越え、珠紀の元へと向かう。
 通り過ぎるたびに、延ばされる腕。腕。腕。
 人であるならば、その腕を取り、彼等を安全な場所へと送り届けるべきだろう。
 何が起こったのかは知らないが、ここに彼等を置いていては危険なのだと…それぐらいは解る。
 だが、真弘はそうしなかった。
 珠紀の姿を見つけても、収まる事のない焦り。
 大勢の存在よりも、取りたい…ただ、一人の腕。
「…っ、珠紀!」
 叫ぶ声に、向けられる眼差し。
 …瞬間…
「言蔵の名において、命じる!刃よ曲がれ!!」
 耳のすぐ隣で聞こえる破裂音。
 頬に一筋、赤い線が走り…
「鴉取様!」
 駆け寄る美鶴の姿に、真弘は己が攻撃を受けたのだと気づいた。
 痛み…はない。
 あまりにも鋭い切り口に、痛みすら感じなかったのだ。
 だが、一拍置いてから、頬を伝う熱に触れれば、それは紛れもなく己の血で…
「ご無事ですか?」
 美鶴の声に頷くものの、真弘の視線は珠紀から離れなかった。
 信じ難い事だが、頬が斬られる瞬間に視界を横切った銀色の筋は、遠目に見た、珠紀の持っているそれと同じ色で…
「どういうこった、美鶴。…んで、珠紀が」
「私にも…ただ…」
 最初はいつも通りだったのだと、美鶴は告げた。
 響く太鼓の音に、笛の音。
 鈴と共に舞う、珠紀の姿は変わらず神々しかったと。
 だが、なんの前ぶりも無く起きた異変。
 最初は最前列の人々が。
 続いて、次の列…更に次の…と、音に混ざり飛んだ血飛沫。
 異変に気づき、楽が止まった頃には既に無事な姿で居たのは美鶴だけになっていたのだと…
「珠紀様は…ずっと、舞われていらっしゃるんです。近寄ると、先ほどの鴉取様のように、解らぬ力で攻撃をされて」
「ふざ…けんなっ!だったら、尚更あんなトコに置いてられねぇだろうっ!」
 解っている。
 頭の隅では理解している。
 けれど……感情が、ソレを否定した。
 向けられた刃。
 それが、誰によって成されたものか…
「鴉取さまっ!!」
 美鶴の声が、走る真弘の背を追い…


←4章-1 | 4章-3→

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あとがき。
ようやく少し進展。

4章-1

2006-10-08-Sun-22:22
 暗闇の中にぽつりと浮かぶ光。
 あまりにも弱々しいそれを目の前にして、珠紀は小さく息をつく。
「…うん」
 目の前には誰も居ない。
 横にも、後ろにも誰も居ない。
 刻一刻と過ぎていく時の中、自分以外の存在はここには居ない。
 それでも、珠紀はまるで目の前に誰か居るかのように頷いた。
「解ってるから…」
 ゆっくりと手のひらを握り締める。
 口元に浮かぶのは笑み。
「もう……逃げないから」
 やはり、返ってくる言葉は無い。
 だが…
「…珠紀…様?」
 暗闇に一筋通る光。
 かけられる声と共に、目の前の光は消え…変わりに、少女の声が耳に届く。
「もう時間?」
 振り向きながら答えると、どこかほっとしたような少女の顔。
 彼女の目には自分はどのように映っているのだろう。
 いつもと変わらず映る事が出来ているのだろうか…
「はい。皆様、お待ちになっています」
 扉に向かって一歩。
 沈み始めた日。
 廊下を赤く染める赤い光。
「美鶴ちゃん…ありがと」
 美鶴の隣を通りながら、珠紀は小さく…声にならぬほどに小さく呟く。
 不安そうな眼差しを感じる。
 何か言いたげな口が、開いては閉じているのを知っている。
 だけど…
 だけど、話さない。語らない。
 全ては今日…
 そう、何もかもが変わってしまう、今日解る事だから…
「珠紀様」
 廊下へと出、歩き始めた珠紀の後ろから声がかかる。
 振り返れば、真剣な表情をした美鶴。
 扉の位置から一歩も動かず、ただ、真直ぐに珠紀を見詰め…
「じき、鴉取様がいらっしゃいます」
「……そ…うなんだ」
 何を驚く事があるだろう。
 忘れていた自分がとった行動に、彼女がどんな思いを持つのかは予想していたというのに…
 そう、予想の範囲内のはずだった。
 あの時の自分を不安に思った少女は、自分の大切な存在を呼ぶだろう。
 それほどに、あの時の自分は不安定だったから…
 けれど…
「…で…も、きっと…間に合わないね」
 動揺がそのまま声に現れる。
「きっと…きっと、あの方の事ですから、寝坊とかしているに違いありません。ですから…」
 それ以上、言葉を繋げる事が出来ないとでも言うように、美鶴が俯く。
 今…。
 彼女も気づいているのだろう。
 今でなければならなかった。
 今、逢わなければならなかった。
「もう、行かないと」
 そう告げると同時に、再び動き出した時間。
 瞳を一度閉じ、そして開くとゆっくりと蠢く力が見える。
「…そう、急がなくてもいいのに」
 美鶴は動かない。
 だからこそ零れる声。
 ゆっくりと上がる口角。
「護るから。…今度こそ」
 見つめる先に淀む力。
 腕につけた鈴が、音を立て…

←3章-2 | 4章-2→

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あとがき。

短っ!短いよママン(涙)
久々の連載の更新ですが、かなり短いです。
次は長くなるので許してください。

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