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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

発情期。4(緋色の欠片)

2009-04-16-Thu-04:22

【発情期。4】


(緋色の欠片:珠紀←守護者)



* 遼のターン *




=======================




 信じられぬものを見た。
 妙に冷静に。けれど、そう、頭に思い浮かぶよりも先にとった行動を思えば、間違いなく冷静ではなかったのだろう…と、遼は珠紀の体を引き寄せながら、そんな事を思っていた。
 教師に呼ばれ、この部屋…補習を受けていた教室を離れたのは十分前。
 己の担任だという存在からプリントを渡されたのが五分前。
 廊下を歩き、流れる桜花に目を奪われたのが三分前。
 そして…


 扉を開いたのは一分前。


 まず、目に飛び込んだのは大きく揺れた白のカーテン。
 次に感じたのが、息苦しいほどの花の香。
 ゆらり視線を巡らせれば、茶色の少女の髪が見え、そのすぐ隣には、赤い、見るだけで苛つく赤い髪が見えた。
何をしているのか…と問う前に、足は動き、少女の体を引き寄せる。
 細い手首。
 柔らかな肢体。
 腕の中に抱え込み、瞬間、我に返ったような表情を浮かべる男を睨みつけ…
 そのまま教室から外に出た。



「遼っ!」
「………」
「遼ってばっ」

 空は青。
 流れるのは白い雲。
 決して、暑いとは言えぬ気温の中を、遼は珠紀と共に歩いていた。
 いや…共に…というのには、聊か語弊があるのかもしれない。
 正確には、遼が前を歩き、少女の手首を握り、少しでも学校から離そうと…引きずるようにして歩いていたのだから。

 あの後…。傍目にも解るほどに呆然として己の手の平を見つめる拓磨を置いて、教室から出た、あの後。
 何度も己の名を呼ぶ珠紀の声に聞かぬフリを決め込んで、廊下を歩き、外へ出た。
 補習自体は終わっていたのだから、帰った所で何の問題は無いはずで。
 だが…
「ちょっと、待ってってば」
 強引に振りほどかれる少女の腕。
 止まる足。
 少女へと体を向ければ、自分は怒っているのだ…とばかりに、釣りあがった強気の眼差しが見て取れた。
 何故怒っているのかが解らぬほど、遼も鈍くはないはずで。
 けれど…
「アイツの所に行かせるかよ」
 唸りと共に、再び少女の手首を掴む。

 少女と拓磨が抱き合ったのを見た、あの瞬間。感情と言うもの全てが吹き飛ぶほどの激しい嫉妬が体全体を支配した。
 今まで、自分が嫉妬を覚えるとするのなら、それは怒りに近いものだろうと…勝手にそう、思ってきたし、事実、少女と他の男が一緒に居る所を目にすれば、それに近い感情を持ちもした。
 だが…今日、己が取ったその行動は、今まで体験してきたもののどれとも違い………
「行かせるかって、だって拓磨、あんなに……」
 心配そうに歪む少女の眼差し。
 何故、彼があんな行動を取ったのか、本当の意味で理解していないのだろう。それは、まるで、風邪を引いた友人を心配しているようにすら見え、知らず、遼の口角が上がっていく。
 そう。少女は気付いていなかった。
 抱き締められた意味。
 求められた意味。
 そして……
「アイツなら、平気だ」
 言葉を紡ぐと同時に、遼はそのまま少女の体を引き寄せる。
 吹きさらしの農道。
 幸か不幸は猫の子一匹見当たらなかった。
 シチュエーション的に言えば、決して百点満天とは言えないだろう。
 だが……
「遼?」
 問われる声に、瞼を閉じる。
 花の、香りが…する。
 茶色の髪に鼻先を埋め、身じろぐ体を尚も抱き締め。
「…珠紀。食わせろ」
 言葉と同時に顎を引く。
「ちょ、え?何?」
 慌てたような少女の声は、何度も聞いた事のあるソレで。
 そう…自分は今まで何度も少女にこんな悪戯を仕掛けていた。
 それは、他の守護者に対する牽制が一つ。
 次に、少女の反応が面白いから…というのも理由の一つ。
 最後の一つは…
 少女の耳の後ろに唇を寄せて、尚も慌てる少女の動きを閉じ込める。
 嫌に、ゆっくりと流れる周囲の空気。
 濃すぎる花の香りが感覚全てを狂わせる。
 想うようりも感じるよりも、動き出す己の体は…まるで、己の意思ではないかのようで…………


『………て、下さい…ね』


 大蛇の言葉が、頭に響く。


「――――っ!!!」

 遼の体が大きく揺れた。
 開かれる赤の眼差し。

「遼?」

 腕の中からは少女の声。
 逃れるように己の胸に片手をつけて、けれど、いつもと違う遼の様子に、心配そうな視線を向けて。

「俺は……」

 何を…していた?

 問う声は声にはならず、ぐらつく視界。
 花の香りがした。
 聞こえぬ声がした。

 少女に触れたいと思っていたのは事実で。
 己のものにしたいとも思っていたのも真実で。
 拓磨と抱き合うその姿を見て、嫉妬した事も本当の事ではあるけれど……
 けれど、自分が望んだものは、こんな…

「オマエは、帰れ」
 掴んでいた手首を離し、遼は唸るように言葉を紡ぐ。
「あの馬鹿は、俺が見に行く」
「……え?」
 困惑する少女の姿。
「一発二発殴って、一緒に帰ってやってもいい」
「いや、殴っちゃ駄目だから」
「だから…」

 だから、今すぐここから逃げろ。

 声にならぬ声を背に、遼は少女の横をすり抜ける。

 そう。
 触れたかった。
 抱き締めたかった。
 己のものにしたかった。
 全て、それは嫉妬のためだと思っていたが……


「…チッ」


 舌打ちと共に、奥歯を強く噛み締める。
 少女に触れるのは、守護者への牽制でなければならなかった。
 少女に触れるのは、少女の反応を見たいためでなければならなかった。
 少女に触れるのは、己自身の意思でなくてはならなかった。

 こんな…こんな、まるで、本能に支配されるような、別の者の意思のようなものであってはならぬのだ。
 何故ならば…

「主を護る事こそが守護者の役目だからな…」

 笑みを深め、遼はゆっくり、もと来た道を歩いていく。
 己自身から主を護れた喜びを、胸に抱き…

 だがしかし、この時、己の事でいっぱいいっぱいの遼は気付いていなかった。

『もうすぐ発情期が来ますから、皆さん、気をつけてくださいね』

 その言葉の真の意味を……


 そう。守護者はまだまだ居ると言うことに…



→5
====================

あとがき。


ごめんなさいぃぃぃっぃぃ(涙ッシュ)いやもう、書いていて、書くのが辛くなって、いっそ『発情期』を2から書き直すかとかも思っていました(謎)何だろう。次回から、もっとターンのお話しが短くなる予定です。
もしかしたら、近いうちにライトな感じに書き直すかもしれません。
……が、これだけは言わせてくださいっ。

遼は自分で珠紀に襲うのは許せるけれど、自分の意思じゃないのに、襲わされるのは我慢できない人じゃないかと思いますっ!結局は自分が襲うんですけどねっ。だって、遼は犬なんだものっ!(チーン)
………やもう、うん。本当…すみませ…ん(バタリ)
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COMMENT



2012-05-31-Thu-10:18
文才ありすぎ!このストーリー好き!!

Re: ぎゃああっ///

2009-04-28-Tue-19:23
藍華さん、こんばんはーっ!!
うわぁ、うわぁ、楽しんでいただけましたかっ!!嬉しいですーっ。私も共学ではありましたが、男子クラスと女子クラスに分かれていたので…
あれですね、青い春と書いて青春なのですよ(なにがなにやら)
一応、守護者全員分は書く予定なので、また、ぜひぜひ読みに来てくださいませーっ!
私も藍華さんを愛してますからーっ!!!!


ぎゃああっ///

2009-04-27-Mon-01:46
遼の発情期!!!・・・たまらないです( ´艸`)←
私は中高と女子校だったので、青春っていいなぁ(遠い目)と
思わず思ってしまいますが、もーーいいですね!イイ!!v
しばらく浮上してなかったうちに、こんなステキなシリーズSSが
出来上がっていたなんて☆
ちょ、これからは携帯からも毎日チェックしていかねばです><!
まだ遼以外の発情期を読んでいないのですが(真っ先に遼かよ笑)
他の守護者や珠紀のも楽しみに読ませていただきますーvv

ごちそうさまでした!
いつもステキな萌えをありがとうございますー!朱音さん大好きだ!(言い逃)

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