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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

図書館便り。(ユリウス×ルル)

2009-07-08-Wed-02:13


【図書館便り。】

(ワンド・オブ・フォーチュン:ユリウス×ルル)



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「ねぇ、ルル。今、君を抱き締めてみてもいいかな」
 カランと手から零れ落ちた羽ペン。
 一斉に向けられたいくつもの眼差し。
 ルルはいっきに頬に集まる熱を自覚しながら、図書館という公の場で、恥ずかしげもなく告げる彼…ユリウスの方へと視線を向けた。

 この学園へと来てから、半年。あの、死の恐怖と戦った最終試験からは、既に一週間という時が過ぎていた。
 相変わらず、異変と呼べるような事がこの学園では日常茶飯事として起きてはいたが、あの時ほどの大事件が起きるはずもなく…いや、起きる前に、恐らく教師の面々が事前に食い止めてくれているのだろう。ともかく、多少波風は立ってはいても、いたって平穏な日々を過ごしていたわけなのだが…

「俺もまさか、こんな所でこんな気分になるとは思わなかったし、今まで思った事も無かったし、正直、自分の感情自体、意味解らないんだけど、いや、ここ以外だったら結構あったわけで…でも、それなりに我慢はしていたつもりだったんだけど、でも、やっぱり無理。ルル、君を抱き締めたい」

「………」

 あの事件以来、ユリウスの螺子が一本外れているように思うのは、きっとルルの気のせいではないだろう。
 実の所、ユリウスがこんな事を言い出すのは初めて…というわけでもないのだ。確かに、図書館でこそ言われた事は無かったが、普段は落ち着き払っているにもかかわらず、何かスイッチが入ってしまうと、今のように…

「嫌なら嫌だって言ってくれてかまわないけど。でも、出来れば今日のうちに君を…」
「っ―――!!ユリウス、ストップっ!」

 そう、今のように、色々な面で常識とかそんなものが無くなってしまうのだ。
 いや、元からあまり常識的とは言えなかったのかもしれないけれど、それでも、今までは、対象が魔法に向かっていたから、周りもさして問題視はしていなかったのだろう。
 しかし、今は違う。
 対象が生物であり、更には、場所も問題だ。多いとは言えないけれど、図書館内には人が居て、ユリウスの問題発言に、見事なほどに自分達は注目の的。
 確かに…確かに、ルルはユリウスの事が好きだし、一般的に言えば恋人同士という関係ではあるのだが、それにしたって…
「ルル」
 向けられる言葉に相手を見れば、きっとルルの気のせいではないだろう。
 どこか…どこか…そう、まるで捨てられた子犬のような眼差しで、更に「ダメか…な」などと言われれば、これで「ダメ」と突っぱねられる人間が居るとするならば、ここに連れてきて欲しいくらいだ。
 もちろん、ルルだって…
「……っ、ここじゃ、ダメ」
 せいぜい、これが精一杯で。
 とたんにうれしそうになる相手の表情。
 閉じられた本と、動く椅子。
 いそいそと、本を返却しに行く姿を視線で追って…


「ユリウスって、こんなキャラだっけ」
 熱くなった頬を両手で覆い、ルルは思わず呟いた。
 どうやら、本日の勉強会はこれにて終了。後は恋人同士の甘い時間。
 けれど…
「ちょっと、困る」
 向けられる好意。
 向けられる眼差し。
 今まで魔法へと向けられた興味関心その他諸々を一身に浴びるその幸運。
 それは嬉しくもあり、同時に…

「ユリウス無しじゃいられなくなっちゃいそう」

 間違いなく溺れてしまうであろう己を自覚しつつ、ルルはこっそり呟いた。



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あとがき。

ユリウスの頭の中に、羞恥という文字は無いと思います。ちなみに、文字が無いのは、あと、殿下もですね。ユリウスの、あの流れるような口調は、書くのは実は楽しかったりします。
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