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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

紫の月。(薄桜鬼:土方×千鶴)

2009-07-24-Fri-01:10



【紫の月】


(薄桜鬼SS:土方×千鶴)






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 白い月が空へと浮かび、大地に落ちる黒い影。
 昼とも違う、その、明るさに、土方は誘われるかのように瞳を上げた。
 ゆうらり揺れる蝋燭の灯りは、外の月明かりには到底及ばず…だからと言うわけではないのだが、文机に手を当て立ち上がる。
 一つにまとめた黒髪が、動きと共に紫紺の布に軽く触れ、ほんの僅かに、音を立てた。

 流れ行く風。
 耳に届く風鈴の音色。
 障子に手を当て、開いて見れば、日の光とは明らかに違う…だが、思わず瞳を細めるほどの光が目に入る。
 眩しいわけではない。
 大地に落ちる月明かりは、目を焼くほどの強さは持たず、だが…

「ひ…じかたさん?」

 届いた声に、己でも気づかぬうちに、息を呑む。

 もしかしたら…と思わなかったわけではない。
 あまりにも明るい月の光に、少女の姿が脳裏を掠めた。
 白の色には少女の笑みを。
 昼間の暑さを感じさせぬ、涼やかな風には少女の声を。
 突然入り込んできた部外者であったはずなのに、いつの間にか、この場に馴染み、異質な空気を纏いながらも溶け込み、混じる。
 太陽ほどの激しさは無く、けれど、夜の闇の最中にあって、その光は無視する事が出来ぬほどに明るくて。
 しかし、それはあくまでも、少女を思い出した…程度に過ぎない範囲での事だ。
 己や、死番に出かけた隊士ならともかくとして、本来であるならば、この場に保護という名の軟禁を強いている少女が居るはずがない。
確かに、かつてのように、一日中監視こそしていないものの、羅刹でも隊士でも無い少女は朝起き、夜に寝るという生活を繰り返しているはずなのだ。
 …にもかかわらず…
「何してやがる」
 障子の縁に手を当てて、土方は少女を見下ろし言葉を紡ぐ。
 少女からしてみれば、威圧されたと受け取っても良いほどに、己の表情が険しいだろう事は予想済み。
 だが…
「月を…見ていました」
 少女の表情は変わらず。
 少女の声は変わらず。
 立ち去ることも、眼差しを反らす事も無く、先ほどと同じように土方を見つめ、ただただ微笑み、言葉を紡ぐ。
「月が、あまりにも明るくて…」
 だから、つい布団を抜け出したのだと少女は告げた。
 少女とて馬鹿ではないだろう。
 こんな夜中に抜け出して、安全とは言えないだろう事くらい解っているはずなのだ。
 それなのに…
「女がンな時間に出歩くもんじゃ無ぇ」
「そうですね」
「だいたい、鬼の野郎が来やがったらどうするつもりだ」
「土方さんが居ますから」
「気付かないかもしれねぇだろうが」
「気付いてくれますよ。だって……」


 月が、こんなにも、明るいのだから…………


 少女と己の立つ距離は換わらない。
 交わるのは視線のみ。
 己は眉間に皺を寄せ、少女は口元に笑みを乗せ。
 触れもせず。
 近づきもせず。
 それでも…

 大地に落ちた影は色を増し。
 周囲を照らす光は音を消す。

 熱は無い。
 想いは無い。
 新選組の事のみを考え想う己の中に、少女が入り込む隙間は欠片ほどとてありはしない。
 それなのに…

「あぁ、そうかもしれねぇな」

 思わず、口元に浮かぶ笑み。
 今、この場、この瞬間に、自分が障子を開ける事なく、少女が鬼や羅刹に襲われたのだとしても、きっと、自分は…

 瞼を閉じる。
 光は空に。
 揺らぐ風に動く影。
 浮かぶ結果は、正直に言ってしまえば、あまり歓迎出来ぬ物。
 だが…

「入れ」
「土方さん?」
 瞼を開き、踵を返し、少女を見ずに部屋へと入る。
 眩しすぎる月の光から目を背け、今は未だ…
「中の方が、未だ目が届く」

 偽りの理由を口にして…



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あとがき


イメージとしては、こう、眼差しを交わして、ほんの僅かだけれど、感情というものが揺らめいた。そんなイメージなのです。
うーん。でも、ちょっと千鶴が大人っぽすぎる気がするので、頑張って、ゲームをやりなおしてみたいと思います。このお話しの千鶴は、夢の中を歩いている気がするのです。千鶴という人格をもっと伝えられるようにしなければ。
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