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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

月下美人。(山南×千鶴)

2009-08-31-Mon-17:35



【月下美人。】

(薄桜鬼:山南×千鶴)

※これは、山南さん好きな朱音。がどうしても山南さんを攻略したくてした結果、山南悲恋EDになってしまった(という妄想)を元に作られた作品です。
一部、随想録ネタがあります。
ご注意ください。








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『私は、大人ですからね。自己責任なのですよ』



「…うそつき」



 ぽつりと毀れ出る音を、千鶴は止める術を持たなかった。







 仙台城。
 その一室に佇んだまま、千鶴は目の前の存在、山南を見つめていた。
 ぴんと伸ばされた背中。決してこちらを見ない眼差し。
 室内を満たす殺気は、剣を本格的にやっていない千鶴とて理解できていた。
 締め切られた襖。だが、その向こう側に蠢く、いくつもの人では無い存在。
「山南さん」
 紡いだ声に彼は答えず。
「山南さん」
 呼ぶ声に彼は答えず。
 背を向け、刀を構え、まるで…そう、まるで千鶴を守るかのように、そこに立っていた。
 近藤が処刑され、朝敵として扱われ、それでも戦い、戦い抜き、新選組は名を変え、北上しここに来た。
 幾つもの辻斬りの噂を耳にし、そのたびに彼ではないか…そう思い。けれど…
『確認したわけじゃぁ、無ぇだろうが』
 紡がれたその音を確かめるべく、千鶴は、今、ここにいる。
 確かめたかった。
 彼ではないと。
 己で目にした彼は、時に羅刹の衝動に苛まれながらも、それでも…
「貴女は…」
 掠れた声が、耳に届く。
 幾度呼んでも振り向かなかったその眼差しが、肩越しとはいえ千鶴を捕らえ、幾度望んでも向けられなかったその笑みが、影になりつつも向けられた。
 怖い人だと思っていた。
 同時に、優しい人だという事も知っていた。
 情を移したくないからと突き放し、その狂気に支配される様は、仲間の誰が見ても疑う余地など与えぬほどで。そのくせ…
「貴女は、何故、ここに来たのです」
 今更紡がれたその問いに、千鶴はゆるりと首を振る。
 最初に会った彼は、新選組に存在しているのが不思議なほどに優しい存在なのだと、そう、思った。けれど、それはすぐに勘違いで。向けられた冷えた眼差し。紡がれる言葉。不要ならばすぐにでも殺すだろうと告げるその音に、彼もまた、新選組の住人であるのだと、そう知った。
 次に彼という存在を知ったのは、片手が動かなくなってから。行き場の無い怒り。悲しみ。絶望。そして、深い闇。手を伸ばす場所に、進む道があり。それが人の道とは言えないものなのだとしても、彼は…彼は、己のためにソレを口にする。かろうじて残った、人としての良心が紡いだあの叫びを、きっと自分は忘れる事は無いのだろう。
 三回目は羅刹になってから。誰もが彼を血に狂い始めたのだと噂した。そして、それは間違ってはいないのだろう。襲い来る吸血衝動。実際、彼の手が、千鶴自身に伸びた事だってありはした。それなのに…
「………」
 忘れなかった。忘れたくなかった。
 髪に伸びた指を。
 触れた暖かさを。
 決意をこめた眼差しで、それでも自分に向けられた柔らかな笑みを。
 騙し…騙しぬき、彼ならば、それが可能だったというのに。それなのに…

 かすかに届いた小さな吐息は、知らず毀れ出てしまった彼の笑み。
「ですから、私は…」
 逸らされた眼差しは、再び動かぬ襖を見つめ、閉ざされた唇は笑みを消して引き締まる。
「さ…」
「貴女を逃がす間くらいは作りましょう」
 遮られた言葉。
 キシリ
 どこかで…けれど、確かに床が軋み、音を立てる。
 そう時間は無いのだろう。
 今か今かと徐々に増していくその音は、ほんの僅かに襖を揺らした。
「多少、傷がつくくらいは覚悟をしておいてください。流石に無傷で貴女をここから…というのには、敵の数が多すぎる」
 ジリリと下がる山南の足を視界に入れて、千鶴は再び首を振る。
 違う。
「ですが、貴女を土方君の下へと帰す事は約束をしましょう。…まぁ、私の約束では、あまり、信じる事など出来ないかもしれませんがね」
 違う。
 立て続けに紡がれるその音に、千鶴は何度も首を振る。
 違う。
 違う。
 違う。
 ここに来たのは自分の意思で。
 この場に留まったのも自分の意思で。
 守って欲しかったわけでも。
 帰して欲しかったわけでも。
 ましてや…
「っ、私はっ」

 ただ、側に居たかっただけなのだ。

 危険でも。迷惑になっても。彼が自分を邪魔なのだと、思ったのだとしても。それでも。




 襖が開き、音が鳴る。
 白と赤の世界の中で、ただ一つ……彼だけが、舞っていた。








「山南さん」


「山南さん」



「山南さん」



「山南さん」



 何度も何度も言葉を紡ぎ、何度も何度も頬を撫で、何度も何度も涙を落とし、何度も何度も抱きしめる。
 畳に残った血の跡も。
 放り出された刀の山も、もう、千鶴の瞳には入っていなかった。
 彼の腕は千鶴を抱いて、彼の刀は羅刹を切った。
 笑みを浮かべ、瞳を眇め、まさに、鬼の名そのままに、彼は斬り、殺し、返し、終わらせた。
 投げ出された指は白く。
 倒れた体は赤く色づき、吐き出される吐息は荒く…けれど、今にも途切れそうで。
「ゆ………き、…らく…」
「っ、山南さん!」
 掠れた声が彼から漏れる。
 赤の眼差しそのままに。白の髪もそのままに、けれど、浮かぶ色のみ変化して。
 溢れる涙。
 浮かぶ笑み。
 彼の指先が頬にふれ、雫を拭うかのように横へと撫でた。
「…っ、も…ぅ、戻…」
「嫌です」
「ひ……の、…ころへ」
「嫌です」
 帰るならば共に。
 戻るならば、彼も一緒でなくては意味などないのだと言葉を紡ぎ、けれど、彼は穏やかな笑みで首を振る。
 これで、終わりなのだと彼は、告げた。
 己で終わるのだと、彼は、告げた。
 死者の道は閉ざされ、残すは、先が見えてこそいるものの、生者が歩む道なのだと。
 それでも…
「わ…たし、まだ、山南さんに言ってない事があるんです」
 優しい人だと思った。けれど、目的のためならば、何を犠牲にしても構わない、恐ろしい人なのだと、そう、気付いた。
 そのくせ情を捨てきれず。
 切り捨てれば良いにもかかわず、切り捨てられない所など、彼が信頼している彼にそっくりで。
 気がつけば彼の事ばかりを考えた。
 何を考えているのか。どんな事をしているのか。そこに苦しみは決してないのだろうか。自分が居ても助けにならないかもしれない。それでも…
「私は、貴方を………」


 助けたかった。


 思い上がり。
 解っている。
 自分が何も出来ない存在である事など、とうに知っている。
 この鬼の血を提供さえすれば。
 何度、その思いに身を苛まれただろう。
 それなのに、彼は欲しいと告げながらも首を振る。
 協力しろと言いながらも、閉じ込める事など決してしない。
 明らかな矛盾。
 そんな、彼だからこそ…

「可笑しな…もの…ですね」

 血塗られた掌は、跡を残しながら髪へと触れる。まるで、幼い子供にするかのように、何度も何度も髪を撫で。


「一生…で、一度…というのも、可笑しなものかもしれませんが…雪村君。私は、貴女を…」


 引き寄せられた頭。
 視界いっぱいに広がる赤。
 笑みに上がった唇は…




 愛していますよ



 言葉を紡ぎ、そして、消えた。






「………」


 瞬く。
 体を起こす。
 髪を解き、灰が、舞う。
 指を見つめ。
 周囲を見やり。


「………」



「………」



「………」




「………」













『雪村君』







 もう、声は、聞こえない。




==============

あとがき。

のぉぉぉぉうっ!いや、ちょっと、これ、そのうち書き直します。すみません。長編はちょっと難しいから、せめて短編を…とか思った私が浅はかでした。山南さん長編。頑張って書きます。その時にはハッピーエンドで書きます。決意です。
いやもう、随想録をやってからというもの、山南さん熱がすごくて…すごくてっ!何で、人気が無いのかが不思議でっ!土方さんとタメはるくらいに、格好良いと思うんですけどね。どうでしょう。
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COMMENT



神無さまへ。

2010-08-04-Wed-12:10
神無さま、はじめまして。こんにちは!いらっしゃいませっ。
当サイトに来ていただき、読んでいただき、本当にありがとうございますっ。
しかも、しかも、山南さん好きー様とはっ!あまり、山南さんすきーは身近にいらっしゃらないので、本当に嬉しいです。
神無さまは、テレビから山南さんがお好きになったのですね。
山南さんは優しいだけではなく、新撰組のためには鬼にもなれるし、嘘を突き通すこともできる。そんな潔さもたまらないですよねっ。
ぜひとも、ゲーム薄桜鬼の土方さんルートや、随想録の山南事件想起をプレイして欲しいです。
あそこの山南さんもまた絶品なのです。
山南さんと千鶴の長編はコツコツと書いていきたいと思ってますので、遅くなってしまうかもですが、アップしたら、また読んでいただけたら嬉しいです。
それでは、コメント、本当にありがとうございましたーっ!

管理人のみ閲覧できます

2010-08-03-Tue-11:47
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