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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

06 みえるものすべてがたからもの (緋色:大蛇×珠紀)

2009-09-19-Sat-21:16

【さいごにきみとみるせかいがどうかきれいなものでありますように30題 】

(お題はオセロ様からお借りしました。)


06 みえるものすべてがたからもの

(緋色の欠片:大蛇×珠紀)





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 珠紀にとって、大蛇卓という存在は、大人で頼りがいがあって、そのくせ、時折、子供のような悪戯を企んで。二面性どころか、三面も四面もあるのではないかと思うほどに、掴みどころが無い存在だった。
 だから、翻弄されるのは、いつも珠紀。
 言葉を告げられ抱きしめられて、焦る自分を彼は笑う。
 正直、そんな日々は決して嫌では無かったけれど…
「やられるばかりじゃいけないと…思うんです」
 ゆっくり緑色の畳を踏みしめて、珠紀は後ろ手に襖を閉める。
 時は、日が僅かに傾いた午後六時。
 戦いを終えて、一般的に彼氏彼女の間柄になった珠紀と卓は、毎日ではないものの、こうして共に夕食を取る間柄にはなっていた。
 別に二人きりではないのだし、そこには美鶴も静紀もいるのだから、他の面々…特に、清乃だとか、拓磨だとか、真弘が騒ぐほどの進展は無いわけではあるのだが…
「だいたい、卓さんもいけないんです」
 相手からの言葉が返って来ないと知りつつも、珠紀は足音を忍ばせながら、部屋の中央に置いてある机へと近づいた。
 彼氏と彼女。一般的に恋人同士。けれど、自分と卓の間には口付け以上の進展が無い…という事を、友人知人の中でどれほどの人間が知っているのだろうか。
 いや、珠紀は否定しているのだ。必死に否定しているのだ。
 けれど…
『そうですねぇ、あの時の珠紀さんは他の誰にも見せられませんから』
 などと、実は何かあったんです的なニュアンスで…さらに言えば『ねぇ?』などと何か言いたげに目配せをされてしまえば、どちらを信じるか…なんて事は明白で。
 だから、珠紀が日ごろの恨み…いや、意趣返しを考えた所で仕方が無い事なのではないのだろうか。
 普段であるならば意趣返しなんて夢のまた夢。返り討ちにあう事は明白で。
 しかも、その返り討ちは恥ずかしくて恥ずかしくて、人には決して言えないことで。
 だから、チャンスがあるとすれば今だけだ。
 宿題を見て貰い、時間も時間だからと夕食の支度に席を立った。
 時間にすれば一時間ほどの空白時間。戻ってみれば、彼の瞼は閉じられて…
「卓さん?」
 一度目は囁くように。
「卓…さん?」
 二度目はほんの少し大きめに。
 起きないだろうか。
 規則正しい寝息は変わりなく。
 口元にニンマリ悪い笑みが浮かんだ。
 彼が今までしてきた事にしてみれば、本当に些細な悪戯だ。
 普段かけているその眼鏡。
 こっそり外して隠そうなんて…
 いや、ちゃんと、最後は返そうとも思っている。けれど、今だけは。
 机の横を通り過ぎ、机を挟んで彼の前に。
 ついたまま肘の上。固定された顔は動かずに。
「………」
 そぅと指を伸ばすと、眼鏡を…外した。

「………ぅわぁ」

 こんな至近距離で声を出すのは自殺行為に等しいだろう。そんな事は解っている。けれど…
 綺麗な顔をしているのは知っていた。
 長い黒髪が肩から落ちる様なんて、知らない人が見れば女性にすら間違うだろう。瞼を閉じている今ならば尚更で。
 こんな近くで…更に言えば眼鏡を外した彼の顔を見る機会なんて、まったく無いとは言わないけれど、これほどまでにまじまじ見るのは初めてで。だから…
「何を…しているんですか?」
 紡がれた音に、肩が…震えた。
 起きて…いたのだろうか。
 いや、違う。
 即座に思い浮かんだ言葉を否定して、珠紀はあくまでも自然を装って、掌の中に眼鏡を隠しながら体を離す。
 ほぼ同時に、ゆっくりと開かれる相手の瞼。
 寝ていた事は本当だろう。どこかぼんやりとした視界。瞬くたびに、その眼差しはようやく珠紀をしっかり捕らえ…
「珠紀…さん?」
 捕らえ…きれてはいなかったらしい。
 そこに居る存在を確かめるように、僅かに上がった相手の語尾は、目の前に居る存在が珠紀なのだと確信を求めているように、そう見えた。
 これは、もしや…
 眼鏡を握る指に力が篭る。

 困ったように下がる眉。
 意識をはっきりとさせようとでもしているのだろう。額に指を当て、ゆっくりとした動きで瞬きを繰り返されれば、ソレは確信へと変わって行って…
「珠紀さん。私の眼鏡を知りませんか?」
 ダメ押しとばかりに告げられた。
 これは、もしや、いや、絶対。
 どうやら意趣返しは成功らしい。珠紀はくすくすくすと笑みを零し、ずずぃと先ほどと同じように、相手との距離を縮めていく。
 ひらひらひらと相手の前で指を振り。
「どのくらい、目が悪いんですか?」
 問いには答えず問いで返す。そう簡単には返してあげない。これは、成功した悪戯の戦利品。
 だから…
「そうですねぇ。今の位置では、珠紀さんの顔も少し怪しいですが」
 困りましたねぇ…と続ける相手の声に、更に笑みは深まって。
 じりりともう少し距離を縮めた。
「これくらいなら、見えますか?」
「いえ、まだ…目と鼻の位置くらいしか」
「それじゃぁ、これなら」
「あぁ、貴女の輪郭が見えてきました」
「全然見えていないじゃないですか」
 普段、隙を見せない彼の隙だらけのその姿。
 何故だかとても楽しくなって…
 気がつけば、相手と自分の頭の距離は、最初の時よりも、ずっと…ずっと……

「しかし、あれですね…」
「卓さん?」

 気のせいだろうか。
 彼の手が、いつの間にやら珠紀の手首を掴んでいた。

「目覚めに…というのを、正直私は期待していたわけですが」
「す、卓さん?」

 気のせいだろうか。
 彼の眼差しは焦点が合わないどころか、真っ直ぐ珠紀を見つめていた。

「今からでも遅くはありませんが…どうでしょう」
「卓さんっ!?」

 気のせいだろうか。
 彼との距離は、とても…とても近く。むしろ、珠紀の焦点が合わなくなるくらいで……
「っん」
 ぶれる視界。
 瞳いっぱいに広がる、己を見つめる相手の瞳。
 いつもは眼鏡があったから、触れるのみだった、その唇は…
「め…目が悪いんじゃ」
「悪いですよ?ですが、貴女の手に持っている眼鏡が見えなくなるほどではありませんが」
「っ!!!!」

 悪戯にはおしおきをしなくてはなりませんからね。

 とても良い笑顔で告げられた。


 珠紀にとって、大蛇卓という存在は、大人で頼りがいがあって、そのくせ、時折、子供のような悪戯を企んで。二面性どころか、三面も四面もあるのではないかと思うほどに、掴みどころが無い存在で…
 そこに新たに付け加えるとするならば。

「すごく…意地悪です」


 紡いだ声に、彼は、笑った。



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あとがき。

大蛇さんは爽やかな笑顔で悪戯を仕掛けるのが、とても上手いと思うのです。というわけで、大蛇さん×珠紀SSです。このお話しは、お友達の愛さんからの一言がきっかけで書いたわけですが…愛さん、すみません。こんなものしか出来ませんでした(土下座)
もっと、蛇に巻きつかれるみたいな感じにしたかったのですが、私の力量ではこれがいっぱいいっぱい…で(くっ)
よろしければ、きっかけをくださった愛さんに捧げます。…いらないとか…言わないでいただけると嬉しいかもです。
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