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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

「ねぇ、ちゅーして?」(祐一の場合)

2006-10-12-Thu-20:05

 音の無い世界。
 青々とした木々。
 色とりどりの草花。




 …にもかかわらず、まるで壁に描かれた絵のように、生気のないその風景。
 気を抜けば、己の存在を形取る事すら困難だろう。
 それほどに、この世界は自然であり、不自然であった。
 それほどに、祐一はこの世界の一部でありながら、異端だった。
 
 いつもならば…

 作り物のような自然に囲まれながら、祐一は思う。
 いつもならば、このまま溶け込んでいただろう。
 自分は自分という存在でありながら、この世界であるのだから。
 ただ、目を瞑り、ただ、意識を鎮めればいいだけ。
 いつもならば、そうした。
 だが…

 風が…流れる。

 動く空気と共に、細い、細い茶色が舞い、色づく世界。

 いつもとは違う存在。
「珠紀…」
 声が零れる。
 世界に音が溢れる。
 ゆっくりと微笑む少女に指先を伸ばし、その滑らかな頬に触れれば、指先だけでは満足出来ず、触れる面積を増やしていく。
「先輩…」
 少女の唇が僅かに開き…
「キス…して下さい」




 瞬きを一度。
 ぼやけた視界に、先ほどとはまた違う表情をした少女の顔が映る。
 いつの間に、少女から手を離してしまったのだろう。
 触れていた手のひらは、冷たいアスファルトに落ち、少女の顔の向こうには、見慣れた屋上の扉。
 先ほどまで居た場所とは、明らかに違う世界。
 だが、それを追求する以前に祐一はする事があった。
 腕を伸ばす…
「先輩、そろそろ授業が…」
 頬に触れる。
 親指で少女の目じりを擦り…
「ゆ…ぃちせんぱ…?」
 零れんばかりに広がる少女の眼差し。
 瞼を閉じる事はせず、まるで少女の表情、一欠けらも逃さぬとでも言うように見つめたまま、その柔らかい唇を塞ぎ…
 一度、二度。
 少女の眼差しが瞼に隠れ、再び開かれるのを見届けてから唇を離せば、とたんに少女の頬が真っ赤に染まり。
「な…な、ぇ?あの?せ、センパイ」
「してくれと言っていた」
 自然と口元に浮かぶ笑み。
 顔を赤くし、うろたえる少女の姿があまりにも愛しくて、今、この瞬間があまりにも幸せで…

 再び瞳を閉じれば、吸い込まれていく意識。
 傍らには少女の存在を感じつつ、祐一は再び眠りへと落ちていく。
 残された少女は、頬を赤くさせたまま…授業の始まる鐘が鳴り終わるまで、その場を動く事が出来なかったとか…

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あとがき。
祐一先輩が、真弘先輩より報われているのは、人徳の差です(違)

 
 
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