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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

05 きらめくほしぞらにてをのばした (スタスカ夏:月子←白鳥)

2010-02-11-Thu-23:17
【さいごにきみとみるせかいがどうかきれいなものでありますように30題 】

(お題はオセロ様からお借りしました。)



05 きらめくほしぞらにてをのばした

(starry☆sky summer:月子←白鳥)





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 その日は、とても晴れていた。
 ゆえに、部活動が終わった今も、差し込む夕日は道場内を照らし、キラキラ光る床に反射して、眩しさにほんの僅かに視線を落とす。

 タァン

 耳に心地よい…的に当たる矢の音と。
 張り詰めていた空気が僅かに揺らぐ、その一瞬。
 いつもならば、三馬鹿…の一員である白鳥も、犬飼、小熊と共に帰宅している時間であるわけなのだが。
「どうしたの?白鳥君」
 ゆっくり振り返り視線を向けた夜久の存在に、白鳥は肩をビクリと大きく揺らす。

 帰宅途中。忘れ物をした事に気がついた。
 それは別段、必ず必要なものでなく…明日の朝練の時でもいっこうに構わないものだった。それでも、なぜか、今日はソレを取りに戻りたいと心が訴え、犬飼、小熊を先に返し戻ってきた。
 鍵が閉まっていたらそれまでで。
 けれど…
「うん、忘れ物。夜久は…自主練?」
 開いた扉。
 聞こえる音。
 日頃目の保養にしている紅一点の…
「うん。今日…ちょっと調子が悪かったから」
 知られざる努力の姿を見てしまった。
 それまで、白鳥は、確かに夜久が頑張っているのは知っていた。けれど、それでも…
 再び弓を番えようとする少女を視界に入れて、それでも、本来の目的である忘れ物を取りに道場に置かれている己のロッカーへと足を向けながら、白鳥は何気なく声をかける。
 集中している所に声をかけるなんて、本来ならばルール違反も良い事で。だが…
「夜久はどうしてそんなに頑張るんだよー。うちの学校なんて、所詮、部活なんてお遊びだろ?」
 どうしても聞いてみたかった。これが宮地であるならば、無言の圧力に加え、怒りのオーラ。地獄の扱きがあるわけで。だが、少女はやはり宮地と違い。
「そうだね。そうかもしれないけど…。好きだから。白鳥君もそうじゃないの?」
 怒るどころか、弓を置き、かわいい声で問い返された。
 正直…この時の自分は、多少浮かれていた。認めよう。
 この学園で、たった一人しか居ない希少な存在。所謂、絶滅危惧種と同じ扱いである少女と同じ時を過ごし、言葉を交わし、ましてや、今は二人だけ。例え、相手を憧れ以外のもので見ていなかったとしたところで、浮かれるなというのが無理な話で。
 だから…考えなし…だったのだと、今なら思う。
 そう。
「俺?俺は、…そうだなぁ。だって、格好良い感じするじゃん?それに、副部長と部長が上手だからさ、外の女の子と知り合う機会が…お…」
 真剣に取り組むものにとっては侮辱なのも良い所。
 決め付けていたのだ。
 この時の自分は。
 目の前の存在が…
「…ずるい」
 聞こえた声は、今まで白鳥が聞いたことのない声で。
「ずるいよ。白鳥君くらいの身長や、体格がほしい人だっているのに」
 視界に入るのは、今まで白鳥が見た事のない表情で。
「え?だって、夜久は女の子なんだからそのくらいが…」
 不覚にもうろたえて。この答えが正解じゃ無い事くらいわかっているのに。それでも…
「でも、これじゃ足りないの。もっと身長があれば、もっと骨格がしっかりとしてれば。もっと腕の力が強ければ、もっと上手く引けるのに」
 出た言葉を引っ込める事なんて出来なくて。
 悔しそうに握られた手のひら。
 俯き、影になった表情。
 紡がれる言葉。
 そして…
「…ずるいよ。それなのに、真剣じゃないなんて…」

この時初めて、アイドル程度にしか意識していない目の前の存在が、一人の少女であるのだと思い知った。飾りものじゃない。生きて、呼吸して、動いて、考える。自分と同じ等身大の…

「あれから…だよなぁ」

 柄にもなく…真剣に弓道に打ち込み始めた。そのきっかけは、決して褒められるものではないけれど。


■■■


がやがやと騒がしい食堂。所狭しと行きかう生徒。そのテーブルの一つに腰をかけ、白鳥は、フォークを加えながら、白鳥はひたすら前を見つめていた。
 見えるものは頭頭頭。けれど、その間には…
「まぁた見てるのかよ」
 トンと目の前に置かれたランチのトレイ。当たり前のように目の前の椅子に腰をかける犬飼の姿。
 見事に、貴重な鑑賞時間に割り込んできた悪友に、白鳥は頬を膨らませ、抗議する。
 学年は一緒。部活も一緒。けれど、学科は違うこの悪友と、共に昼食を取りはじめ、既に一年が経過するようになっていた。日頃、弓道場では不本意ながらも三馬鹿と呼ばれてはいたが、あくまでも、それは弓道場での中だけだ。
 実際、三馬鹿のうちの一人とは学年も違う事もあり、昼食を共に取る事は滅多にしない。…にもかかわらず、何故、この二人は常に共に行動してしまうのか。
 眉間に皺を寄せて犬飼を見てみれば犬飼は犬飼で同じ事を考えているのだろう。
 お互いに顔を見合わせ、同時に零れるため息一つ。
 まぁ、どちらにしても、とてつもなく仲が良く、とてつもなく相手と一緒に居たいから…なんて事ではない事は重々承知。
 そう。一番近いものがあるとするならば…
「まったく、飽きもせず、毎日毎日。見るくらいだったらお前もあのメンバーに混ざればいいだろ」
 再び告げられたその音に、白鳥は眉間の皺を即座に消して、へらり、気のない笑みを浮かべた。
おそらく…いや、間違いなく。相手はどうかは知らないが、自分が犬飼と一緒に居る理由なんてたった一つ。
「あの中に入っていける勇気を俺にくれ」
「無理だな」
白鳥の中のアヒル。
これに、つきる。
良く言えば、楽…なのだ。
頭脳明晰。スポーツ万能。容姿端麗とする面々は、本来ならば、そうそうお目にかかれるはずがないものの、この学園に限っては違っていた。
三拍子揃っている者は稀ではあるが、どれか一つであるならば、在籍する大多数がソレだろう。ゆえに、自分のような、全てが並の存在は、正直…居心地悪い…のだ。
その点、犬飼は違う。決して、悪いとは言わないけれど、それでも自分と同じものを持ち、そして、恐らく自分と同じ事を考えているのだろう。だから…
「いい加減、不毛な恋心から卒業すべきじゃないのかねぇ」
「………」
 こんな事を言われたって、全然平気なわけなのだ。
 これが、部長や…いや、絶対言わないだろうけれど。宮地や…実の所、言うのかもしれないなんて事は黙っておく。木之瀬なんか…確実に言う。絶対に言う。…に言われた日には、うちのめされて、あぁ、もう、彼女はお前と付き合ったのか…と思うまでいたってしまうわけなのだが。
「だいたいなぁ。男の中に女一人だから、もてはやされているけど…夜久くらいの子は外を見ればいぃーっぱい居るんだぞ?何も…」
「いないよ」
「…ぉい」
「…いないんだ」
 目の前の存在が、自分を心配して言ってくれている事くらいは白鳥だって解っているのだ。
 彼女を貶すような事を言った所で、その実…犬飼にだって解っているはずなのだ。
 どれだけ、自分にとって彼女が特別で。
 誰も代わりになど出来はしない事を。
 確かに…外に目を向ければ、溢れんばかりにたくさん女の子はいるだろう。
 可愛い子も性格の良い子もたくさんいるだろう。
 現に、夜久は頑固だし。(それも可愛いけど)すぐ泣くし(それも可愛いけど)すぐ怒るし(それも可愛いけど)。でも、この鬼のように魅力的な人間のバーゲンセールである学園の中で、平凡な自分を認めてくれたのは、そんな彼女だったから。
 耳に届く笑い声。
 自然と集まる視線の先。
 星月学園の紅一点。
 学園のマドンナ。
 弓道部の勝利の女神。
 誰もが憧れ、恋をする。
 けれど…
「俺も王子様になれないかな」
「ゲッ…」
 少女を囲むは王子様。
 顔良し、身体良し、性格良し。
 所詮一般市民の自分には…
「でも、羨ましいって言われたんだぞー」
「………ぁー、はいはい」
 それでも、夢を見るくらいしてもいいとは思う。
「真剣に頑張っているんだけどなぁ」
 前を見て。
 フォークを噛んで。
 目の前からのため息は、聞かぬフリを決め込んで。
「アイツも残酷だよなぁ。たまにゃ、七人の小人に目を向けてやってもいいだろうに」
「………」
 お姫様は、相変わらず王子様に囲まれて。
 お姫様は、相変わらず可愛い笑顔を振りまいて。
 けれど…

「あ、気付いた」

 こんな幸せがたまにはあるから。
「……お前に、キング・オブ・マゾ。略して、KOMの名をやろう」
 目の前から聞こえた声は聞かなかったフリをして、駆け寄る少女に手を振った。
 

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あとがき。


……えとですね。すみません。でも、どうしても書きたくなってしまって。何気に、夏の白鳥君が好きです。三馬鹿の中で、彼だけは、本気で月子の事が好きなんじゃないかなーと思って、こんな事を書いてしまいました。
非凡な中での平凡。犬飼は、何気に頭良さそうな感じで。コンピューターとかに強そうな感じなんですが、白鳥は叶わない星に手を伸ばす、平凡な存在なイメージが。(酷)で、それを犬飼が見ていて、「お前、本当に馬鹿だよなぁ」とか呆れられているといいなと思います。
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