fc2ブログ

朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

簪。(薄桜鬼:土方×千鶴)

2010-04-09-Fri-05:11



【簪。】


(薄桜鬼:土方×千鶴)







==================



「土方さん、とても良くお似合いですっ!」

 頭上には春先特有の薄水色の空。
 足元には、白い花弁が散らばり。
 背には、両腕を回しても尚あまりあるだろう。老木とすら呼べるような灰色の皮を持つ、木の幹。
 目の前に居る、瞳を輝かせる少女を見下ろして、土方は普段から滅多に無くなる事の無い眉間の皺を更に深め、重く、深いため息をついた。



 事の起こりは、そう…
 自分が何の気なしに告げた一言だったように、土方は思う。


 蝦夷の地での冬はとても長い。
 江戸…もしくは、京に居た時にはたいして気にも留めていなかったのだが、雪が溶ければ春になる。当たり前であるその事が、この蝦夷に来るまで、頭では解っていても理解はしていなかった。
 だから…というわけではないのだけれど、長い冬を終え視界いっぱいに広がる桜を見たその瞬間に、『簪にでも出来そうだ』と、そう、告げた。
 あくまでも、それは少女に似合うだろうと思って出た言葉であったわけなのだが、どこをどう間違えたのか、少女の手に持たれた桜の枝は…
「少しじっとしていてくださいね」
 真剣な少女の手によって、己の頭に飾られた。
 いや、解っている。
 それほど嫌であるのなら、途中で少女を諌めれば良いわけなのだし、逃れる機会はいくらでもあったのだ。だが、赤く染めた頬で、何故だかすごく嬉しそうに、まるで抱きつくかのような体勢で己の頭に手を伸ばされれば、離す事も逃れる事も、正直…出来はしないのだ。
 それほどに、子供から女へと変貌を遂げたこの少女に溺れている己を自覚する。
 例え…そう。それが例え、己の頭に花を飾られるという、鬼の副長である己を知るもの…特に、総司になどに見られた日には、腹を抱えて転げまわって笑うだろうほどにありえぬ事であろうとも。
「やっぱり、綺麗です」
 触れた手は髪に触れたまま。
 己を見つめる眼差しも反らさぬまま、小さな唇から零れる甘い声。
 ひとひらの花びらが髪から落ちて、佇む少女の髪へと触れた。

 正直、土方にとって己の髪に花を飾られる…更に言えば、そのままにしておくという事は少女でなければ決して許さぬ事で。己の髪を花を綺麗と告げるその表情を見ても、零れるため息を留める事は出来ないけれど。
「お前の目を留めて置く事が出来るんなら、しょうがねぇ。今は飾られておいてやる。…だがな」
 少女の大きな瞳が更に大きく開き、そのまま零れ落ちるのでは無いのかと心配になる。もちろん、そんな事があるはずはないのだけれど。己の突拍子も無い想像に思わず口角が上がっていく。
 そんな表情すら己を捉えて離さないのだと告げたのならば、一体目の前の少女はどんな反応を示すのか。
 赤くなるのか。
 それとも、照れて逃げだすのか。
 どちらにしても…
 指を伸ばし少女の顎へ。
 固まる少女の唇へ、己の唇を近づけて。
「お前以外の花は、必要か?」
 そう。己を飾る花があるとすれば、たった一輪で十分だ。

 人の命など紙切れのように容易く消えるこの世界の中で、傷つき、血を流しても尚咲くこの花さえあるならば。

 流れる風。
 触れる花。

 甘い香りに包まれて、花抱く男は夢を見る。

 両足を血溜まりへ。
 両手を血に染めて。
 けれど、その両腕は真白な花に満たされて。


=====================-

あとがき。

このお話しは、ボツ原稿だったものを書き直した作品だったりします。元ネタは某雑誌の表紙の、頭に桜を挿した土方さん(だった気が)雑誌では平助と左之、土方さんの三人でしたが、今回は土方さんオンリーで挿してみました。
全てが終わったその後は、土方さんは千鶴に勝てないし、千鶴も最終的に土方さんには勝てないんじゃないかというお話しです。
…久々すぎて、土方さんの口調が変です。
スポンサーサイト



COMMENT



コメントの投稿

HOME