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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

10 せなかあわせて (お題SS:イシュマール×アスパシア byデザートキングダム)

2010-06-09-Wed-15:13



【さいごにきみとみるせかいがどうかきれいなものでありますように30題 】

(お題はオセロ様からお借りしました。)




10 せなかあわせて


(デザートキングダムSS:イシュマール×アスパシア)







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「私、アンタに言わなきゃならない事があるの」

 空には満点の星。
 周囲は金色…に輝いていた砂の粒。
 昼の暑さが嘘のように、氷点下まで下がる外気から守るよう、テントを張り、毛布に身を包み、アスパシアはイシュマールと背中合わせでそこに座っていた。
 完全な魔神となり、イシュマールと共にキングダムを出てから、既に十一の太陽と十の月を頭上に抱いた。
 今日は十一回目の月が輝くその夜で。
 だから…と言う訳ではないし、実のところ、ずっと以前から言わなくてはならないとは思っていたのだ。ただ、言うタイミングがどうしても掴めなくて。
 想いを通わしあって、共に旅する日々が楽しすぎた…というのも理由に挙げられる。
 けれど、本当はそれだけではない事を、アスパシアは重々理解していた。完全な魔神とは言え、キングダムの日々に慣れきってしまっていた己の体である。力を使えば、重力からも切り離せると解ってはいつつも、イシュマールと共に進むと決めたその時に、魔力は使わないと…他でもないアスパシアがそう誓ったのだ。
 ゆえに、最初の頃はそれはもう、旅の疲れが出た…と一概には言えぬほどに疲れた。
 毛布に包まった瞬間に落ち、目が覚めて自分が寝ていたのだと気づくくらいに。
 それで、ようやく慣れたのがこの十一日目なのだ。
 だから、決して、十日…という区切りがいいからなんて理由ではない。そう。決して。
「なんだね?」
 背中越しに伝わる体温が、アスパシアの言葉を促すように声をかける。
 お互い、お互いの顔は見ていなかった。
 空を見上げ、くだらない会話をする。
 その予定で。
 だけど…
「あのさ、アンタの事だから覚えているとは思うけど。…私、一度、過去をやり直そうかって言ったじゃない?」
「あぁ…」
 本当なら、こんな事は今更、蒸し返すような事ではない。
 あの時、イシュマールは過去はやり直さないと、そう、言ったのだ。だが、アスパシアは…アスパシアには、あの時、イシュマールには言っていない真実があった。
 彼の慟哭を聞きながら。
 彼の決断を聞きながら。
 彼の選択を誇りながら。それでも…
「ねぇ。イシュマール。アンタはあの時…」

 少しでも、私と出会わなかったかもしれない現実を惜しんでくれたのかな。


「な…んだって?」
「あ、こっち見ないで欲しいんだけど。すっごく馬鹿な事言っているのは解っているし、今更言うべき事じゃないって事も理解している。アンタはあの時すっごく悩んで、他の皆の、今のアンタの未来を取った。ただ…」

 イシュマールの考えは尊い。
 自分の望みで未来を変えてはならない。
 それは、正しいし、そうであるべきだ。
 けれど…

 膝を抱え、膝へと額を押し付ける。
 動くたびに毛布の隙間から風が入り、冷たい空気が肌を冷やした。

「過去をやり直したら、アンタとすごした記憶は消える。それを、少しでも惜しいと思っていてくれたら嬉しいなって…」

 そう。これがずっと言いたかった事だった。
 悩んでいるその中に、自分の存在は居るのだろうか。
 苦しんでいるその中に、共に過ごした出来事は在るのだろうか。
 なんて利己的な想い。
 これはある意味、問いに見せかけた懺悔。
 
 それが全てであるとは言わないけれど、それでも、アスパシアの心の中にその想いは確実にあったのだ。
 だから…
「……」
 耳に届くため息。
 僅かに動く体。
 合わさっていた背から体温が消えて…
「…っ」
「まったく。馬鹿だ馬鹿だとは思っていたがね。ここまで馬鹿だとは思ってもみなかったよ。喜びたまえ、今すぐ君にキングオブバカの称号を授けてやろう。これは、あのセラ君の上を行く称号だ。嬉しいだろう。嬉しいだろうね。嬉しいに違いない」
 代わりに、背だけではなく両サイドからも体温が伸びてきた。
「ちょ、ちょっ、な?え?何でそうなるのっ!?」
 上げた眼差しに写るのは、己のものではない両足の膝。
 そこでようやく、背から抱きしめられているのだと気づく。
 いや、そもそも自分は相手から罵倒されるのを覚悟して、この事を打ち明けたのではないのだろうか。あぁ、でも、確かに馬鹿とは言われた。言われはしたが、これではまるで…
「だいたいだね。君は私をまるで聖人のように扱って、更には優しいだのなんだのと最近言ってはいるようだが、正直な所、私は一般的な人間の括りから抜け出す事など出来ないほどに人間らしい人間なのだよ。そもそも、物事においての善悪というものは主観的なものであり、他人から見てどうであれ、それが本人が善であると言えば善になり、悪と言えば悪になる。今回の場合、君から見て…おそらく、私が他の大多数の他人の未来を摘む事などできない。そう思っての結論なのだと思っているのだろう?それに関しては否定するつもりはないがね。だが、それだけで済むのであれば、それこそ聖人と呼ぶにふさわしい。ここで最初に戻るわけなのだが…」
 抱きしめる腕に力が篭る。
 毛布に深く刻まれる皺。
 本来ならば、痛みすら感じても良い程の圧迫にもかかわらず…
「君の問いに答えるとするならば、私はあの瞬間、君の居ない現実など欲しくはない。確かにそう思ったのだよ。姫君。いかにも自己中心的な欲の深い人間らしい考え方だとは思わないか?」
「回りくどいけど、つまりそれって…」
「君の望む通りの現実が起きていたわけだ。…まったく、一体何を言われるのかと思っていれば…。相手を愛しいと思うのだから、離れたくない。忘れたくないと思うのは、罪にはならないと思うのだが…だが、魔神である姫君にそれを望むのは酷な話しというものか」

 相変わらず、空には星が瞬いていた。
 月の位置は先ほどと、たいして変わってはいない所を見れば、大分時間が経ったかのように思えたのは、心情ゆえの錯覚か。

 瞬く。
 手を伸ばす。
 膝を曲げる。
 笑みをつくり。

「それって、私を軽蔑しないって事だよね」
「軽蔑する理由がどこにあるのかね。だいたい、忘れたのならば、何度でも思い出していただきたいものだがね、私は君を神だなんて最初はこれっぽっちも信じてなどいなかった。けれど、惹かれたのだよ。いつの間にか私のエリアに入り込み、強引に連れ出して、外を見させてくれた君に…ね。そんな君が、いかにも人間らしい欲を見せた所で、どう、軽蔑しろって言うんだい?」

 嗚呼、本当。なんて、この存在は…

 決して、優しいとは言えない口調で。けれど、毀れだす言葉はどこまでも優しくて。

「やっぱり、私はアンタが好きだと思う」
「思うだって!?」
「ううん。すっごく好き。愛しているってこういう事を言うんだね。だから、さ、イシュマール」
「なんだね」
「いっぱい、子供作ろうねっ!」
「なんだってっ!?」


 人は強く。
 人は優しく。
 人は愛しく。
 けれど、人は、弱い。

 だからこそ…


「知ってる?愛しているもの同士がキャベツ畑で一緒に寝ると、子供って生まれるんだって。父様と、ウンバラがそう言ってたもの」
「………」


 これほどに、人に憧れるものなのだと。
 アスパシアはようやく気がついた。


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あとがき。

書いていて、アスパシアの口調が一番難しい事が判明しました。ついつい、女の子口調にしたくなります。何故だろう(遠い目)
この後の子供ネタは、そのうち書きたいと思います。
キャベツ畑で一緒に寝るって、寝袋にでも包まるんですかね。姫様。
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