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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

拝啓○○さま。前編(緋色:拓磨×珠紀)

2011-01-22-Sat-03:14

【拝啓○○さま。-前編-】

(緋色の欠片:拓磨×珠紀)






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 拝啓、母上様。拓磨が触らせてくれません。


 カタカタと音を立てるガラス窓。
 子守唄のように聞こえる教師の声。
 そこに更に付け加えるならば、濃い緑色の黒板に瞼を閉じさせる呪文が描かれ、透明なガラスの向こう側からは抵抗を止めろとばかりに差し込む暖かな日差し。
 油断すればすぐにでも夢の世界へ旅立つだろう条件が満たされた昼食後の授業中。珠紀は目の前の背中を見つめていた。
 季節は秋…とすら言っていいのか不明な冬一歩手前の11月。
 この季封村において秋という季節はとても短く、緋色の世界は早くも色を失っていた。…とはいえ、ストーブなどの暖房器具が無いと眠る事すら困難な冬とは違い、日中…特に、今日のような暖かな日差しが差し込むこの時間帯は、秋である事すらも忘れるほど心地よく…
「…と」
 思わず閉じそうになる瞼を必死に留め、珠紀は再度、目の前にある大きな背中を見つめた。
 戦いを終えて数週間。
 徐々に縮まっていく距離と育っていく想い。
 緋色の時雨の中で口づけをし、同じくらい赤い太陽の下、共に歩いた。
 何度も何度もそれらを重ね、そんな日々がずっと続くものだと、そう、思っていた。
少なくとも、あの日々の中、拓磨も同じ気持ちだったに違いない。なのに…
「………」
 コツン
 珠紀の指が机を叩き、教師の声のみが響くその中で、小さな小さな雑音が、心地よい世界に小石を落とす。だが、それも一瞬の事。波紋にすらならぬその音は、途切れぬ教師の声にかき消えた。
 別に…
 唇のみで言葉を紡ぎ、珠紀は掌を握りこむ。
相変わらず目の前の背中はピクリとも動かず…微妙に丸まっているところを見れば、おそらく眠っているのだろう。そんな事は授業が始まった当初から解っている。それでも…
「拓磨」
 そぅと腕を伸ばし、制服の背中部分を突いてみた。
 ピクリとも動かない。
「………」
 そぅと腕を伸ばし、今度は少し強めに突いてみた。
 やはり、少しも動かない。
 あぁ、まただ。
 腕を引き、珠紀は背を見つめたまま息を吐く。
 手を繋いだ。
 抱きしめたし抱きしめられた。
 口付けもした。
 好きだと言ったし、愛しているとも言われた。
 それで十分だし、それ以上をと望まないでもなかったけれど、今はこの時と大切にしたいと思っている。恋人同士の甘い蜜月。言葉にすればまさにソレ。
 それなのに、何故か数日前から拓磨は珠紀に触れなくなっていた。
 一緒に登校するし、もちろん一緒に帰る。二人きりではないけれど、お昼だって一緒に食べている。嫌われた…とは思わない。そういう意味で好きではなくなったとも思わない。
 だって、触れはしないけれど、拓磨の目が、それは違うと言っている。
 ぶっきらぼうで、お世辞にも愛想が良いとは言えないけれど、珠紀へ向ける笑みはとても優しく。その眼差しの更に奥には珠紀を求める熱が隠れ見えた。
 ならば何故…
 シャープペンを握りこむ。やはりこちらを向かない相手の背中。
 正直、珠紀は解らない事をそのままにしておけるほど大人しい性格ではなかった。
 嫌な事を飲み込んでしまうほど、内気な性格でもなかった。
 とある先輩に言わせれば猪突猛進。
 ぶっちゃけ、猪だと言われた事すらある。
 だから、つまり、何をするかと言えば…
「……」
 もちろん今は授業中。何故なのかと詰め寄る事なんて出来やしない。そう、出来るといえば、ほんの些細な抗議活動。
 握りこんだシャーペンを、指の上でくるりと回す。
 本来ならば、親指を当ててカチカチ鳴らすその部分を、そぅとそぅと相手の背中に近づけて。
「拓磨の、馬鹿」
 囁きと共に押し出した。
「っ!?」
「どうしたー、鬼崎」
「…っ、な、何でもないス」
 ガタリと大きな音を立てる椅子。
 途切れた低い子守唄。
 即座に引いた己の手は、しっかり教科書の上に収まって。
 けれど…
「前、向けば?」
「オマエな」
 恨みがましい眼差しに、心の中で舌を出す。
 多分、こんな事をしてみたところで相手はきっと解っていないのだろうが。それでも…
「………」
 再び始まる教師の声と、やはり、再び丸まる相手の背中。
 相変わらず眠気を誘う柔らかな日差しに瞳を細め。
「拓磨の、ばか」
 
 呟きと共に突っ伏した。


後編へ
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あとがき。


そんなわけで、久々の緋色SS。しかも、拓珠です。このお話しは、愛美さまに捧げます。リクエストいただき、拓珠の甘いお話しでとのことで…
いや、甘いか?甘いのか?な終わり方ですが、前編ですからねっ!後編は…………すみません(土下座)
所詮、私が書くものなので、許していただけたら幸いです。続きは出来上がっているので、明日、早速アップさせていただきます。ともかく、拓磨の背中の真ん中にシャーペンの後ろっかわでぐっと押せたので満足。あれは、痛いと思います。
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