fc2ブログ

朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

拝啓○○さま。後編(緋色:拓磨×珠紀)

2011-01-23-Sun-03:16



【拝啓○○さま。-後編-】


(緋色の欠片:拓磨×珠紀)







============================





拝啓。父上さま。珠紀に触る事ができません。


 いや、違う違う。
 ふと思い浮かんだその単語に、拓磨は瞼を閉じたまま眉間にくっきり皺を寄せた。
 時は昼食が終わってすぐの数学の授業。
 生徒の間では、きっと眠りの呪文が使えるのだと噂されている数学教師の授業は噂に違わず拓磨にもその威力を発揮していた。
 気を抜けばすぐにでもあははうふふの夢の世界に誘われそうになるほどの心地よさ。窓際にプラスされ、木枯らしを遮る窓から降り注ぐ暖かな日差しがそれに輪をかけていると言ってもいいだろう。現に、両腕は既に己の頭の下。背は丸まり、少しでも瞼を開けば視界に入るのは教壇にいる教師ではなく、茶色の机なのだから。
 もう一押しもあれば確実に眠れるだろう。それが今の拓磨の現状であった。
 本来であればその誘惑に抗わず、すぐにでも夢の世界に旅立つのだが、今日に限っては違っていた。
 コツリ
 背から響く固い音。
 更に言えば、見てはいないのだけれど物言いたげな眼差しを感じている。これは何も守護者だからの超感覚…というわけではもちろん無い。
 授業の始まる前から…いや、数日前から。拓磨が珠紀にこの眼差しを向けられていたせいである。
 原因も、もちろん解っている。
 拓磨が珠紀に触らぬせいだ。
 コツリ
 再度聞こえたその音に、拓磨はそぅと息を吐いた。
 いつから…と言えば、おそらく最初から。
 珠紀を女として意識したその瞬間から。
 それは拓磨の心にずっと居た。
 戦いの最中は正直それどころではなく、生きるか死ぬかの瀬戸際だったからこそ、守らなければという意識が先に立ち。けれど、抑えることができない衝動に少女を抱きしめ口付けた。
 けれど、平和になり。心に余裕が出てきたからこそ生まれる葛藤。
 愛しいと想う想いは変わらず。
 触れたいと恋う心は変わらず。
 その想いのまま、口付け事も何度かあって。
 けれど、ふいに気がついた。
 それだけでは足りぬ何か。もっとと願う心。
 ともすれば、抱きしめて抱きしめすぎて潰してしまうのではないかと思うほどに膨れ上がる欲求。
 だから…
「拓磨」
 囁くような声が聞こえ。
 背に感じる相手の指先。
 体温など感じるはずがない。触れた箇所はほんの僅かで。しかも、己は制服を着ているのだ。
 それでも。
「………」
 再び触れたその指先に、すぐさま振り向きたい衝動を掌を握り締める事で必死に堪える。
 急に触れなくなった自分に珠紀がどんな思いを持ったのか。それは安易に想像できて。けれど、理由など言えるはずもない。
 そんな…


 触れたら最後、理性も何もかもかなぐり捨てて抱いてしまいそうだから…だなんて事。


 あぁ、でも出来る事なら…

 去っていく体温。感じなくなった相手の指先。ほぅと落とした息は顔の下のノートを揺らす。
 今はまだ、心を落ち着けるように意識を闇へ。闇へ。闇へ…
 落ちそうになった瞬間、即座の覚醒。

「っ!?」

 音を立てる椅子の足。いっきに伸びた己の背筋。
 注がれるいくつもの瞳瞳瞳。けれど、それら以上に己の意識を持っていくのは。
「どうしたー、鬼崎」
「…っ、な、何でもないス」
 ズキズキと痛みを訴える背骨の真ん中ピンポイント。
 誰がやったかなんて事は、確認せずともわかってはいるが。
 肩越しに振り向けば、不機嫌そうな少女の眼差し。おそらく己に痛みを与えたであろう武器を唇に当ててニコリともしないその様子は如何に少女の機嫌が悪いのかを物語っていて…
「前、向けば」
 その声音が更に拍車をかけていた。
 これはいけない。いただけない。正直、拓磨は怒っている珠紀も嫌いではないが…それでも…
 前を向き、再び寝たフリを決め込みながら時計を確認してみれば、授業が終わるまであと10分。
 一番良いのは、珠紀に全ての理由を話し、だから触れられないのだと納得させること。もちろん、そんな事など出来るはずがないのだけれど。ならば一体どうするか。
「持てよ。俺の理性」
 小さく小さく呟く声は、もちろん教師はおろか珠紀にすら聞こえぬほどに小さなもので。
 本来ならば、しっかりと落ち着いた場所で落ち着いた時に落ち着いた心のままにすべく仲直りの行動を、だが、拓磨はその若さゆえに思いつかず。
 だから…
 教室内に響くチャイムの音。教壇に立つ教師。『起立』の号令。一斉に鳴る椅子。それぞれが前へと視線を向け、もしくは教科書をしまうべく手元へと。もちろん、周りなど見る余裕のある者など一人も居らず。
 顔を上げる。
 机に手をつき、椅子を膝の裏で押しながら立ち上がり…ながらに振り向いて。
「悪かった」
 謝罪と共に片手を相手の後頭部へと。
 ほんの一瞬。
 時間を数える間すらないくらい。
 触れたか触れぬか解らぬほどの、掠めるような口付けは…
「礼」
 続く言葉が聞こえる頃には離れ。
「着席」
 再び響く雑音の中へ。
 これでは、己のここ数日の苦労も何もかも水の泡だと解ってはいるが、それでも…
「ねぇ、拓磨」
 背を突かれる感触には振り向かず。
「ねぇねぇ拓磨」
 制服を掴まれる感触にも振り向かず。
「それだけ?」
 続く言葉に突っ伏した。
 授業が始まり終わり、共に帰る時間まで数時間。それまでに固めておかなくてはならない決意であれど、既に壊れそうになっているだなんてこと…
「………持つかよ」
 思わず零した呟きは、少女に聞こえるはずも無く…


 拓磨の理性が何日持つか。密かに某守護者間で賭けの対象になっているなどという事は、もちろん当人達のあずかり知らぬところである。


END

←前編

=============================-

あとがき。

そんなわけで、後編の拓磨バージョンです。いや、拓磨はね、こう、思い立ったら授業中だろうがやる時はやる男なんじゃないかと思うわけです。欲を言えば、ちゅーシーンをもっとこう、色気たっぷりに書きたかったわけですが、残念ながら私の技量ではこれがいっぱいいっぱいでした。
お話しの中では、誰にもバレてないとなっていますが、あくまでも拓磨視点なので、数名にはバレています。
でも、バレても、きっとクラスメイトの心の中にひっそりと仕舞われることでしょう。誰だって、馬に蹴られたくはな…(げふげふ)
スポンサーサイト



COMMENT



コメントの投稿

HOME