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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

閉じ込めた夢。(薄桜鬼:沖田×千鶴)

2011-02-14-Mon-23:44




【閉じ込めた夢。】

(薄桜鬼:沖田×千鶴)







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 時折、彼女と距離をとりたくなる時がある。






 夜空に浮かぶ月。
 耳の直ぐ横を通り過ぎる冷えた風。
 普段であるならば、雨戸を閉め、外気を決して中へと入れぬよう幾十にも外と内を隔てる扉、もしくは障子の閉め忘れが無いかどうかを確認するのだが、今日はあえて縁側に続く雨戸と障子は開いていた。
 離れに続く廊下を照らす灯りは柔らかい。
 西側に傾いていた白く丸い月は、もう数刻もすれば太陽の光に霞むのだろう。それでも、それを見つめながら、沖田は冷えた廊下へ腰を下ろす。
 ここ…この場所には、沖田一人しか居なかった。
 戦いから離れ。
 少女と共にこの場所へと腰を落ち着け。
 幾度目かの桜を見つめ。
 幾度目かの桜の褥で瞼を閉じた。
 常に少女の傍に居て、常に少女と言葉を交わしていた。
 それは家へと帰り、眠る時であったとしても例外ではない。
 それなのに…
「千鶴ちゃん」
 紡ぐ音は、眠る少女の傍までは届かぬだろう。届けぬつもりで抜け出てこの場所へと来たのだから。
 それでも。
「千鶴ちゃん」
 ただ一人の愛しい存在の名を呼ぶ事を止める事などできなかった。
 ずっと傍にいたい。
 離れたくなどない。
 その姿を見つめ。
 その声を聞き。
 その存在を確かめ。
 その体を抱きしめたい。
 それは常に思う事であり。
 だが、時折、沖田は思うのだ。
 瞼を閉じ。
 腕を放し。
 耳を塞ぎ。
 ただ一人。
 暗闇の中に在りたいと。
 愛しいと想う心は変わらず。
 恋しいと求める心は変わらず。
 それでも。


「寒いよ」


 やがて来る別れの時が別れの時でなければ良いのに。
 瞼を閉じ、それが開く事がなかったのだとしても、己が瞼を閉じるその瞬間。少女の瞼も閉じれば良いのに。
 間違いなく己が先に逝くのだろうが、それでも、一人は嫌だった。

 だからこそ、沖田は布団を抜け出し、一人…一人だけで月を見る。

 寒かった。
 とても、とても寒かった。
 膝を抱え、己自身で暖を取る。
 それでも、寒さは変わらなかった。

「千鶴ちゃん」

 再度、愛しい人の名を呼んで。


「沖田さん?」

 聞こえた音に瞼を閉じる。

 ごめんね。泣きそうなんだ。

 月の位置はさして変わらず。
 数刻もすれば登るであろう太陽の光も未だ見えず。
 かけられた声に。肩にかけられた温もりに顔すら上げる事のできぬまま。



 離れて、触れて、確かめる。






 傍に居たくて離れたくて暖かくてけれど寒くて。

 それでも離す事など出来なくて。


 ただ、確かなものは一つだけ。


「ごめんね。君を、愛しているんだ」




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あとがき。

このお話しは、アンケートでいただきましたリク「沖田さんの切ないお話し」で書いてみました。切なさ具合が足りないとかそんな……orz
好きだからこそ離れたい理由は、結構、たくさんあるんじゃないかと思う中で、暖かさを確かめるために離れる、怖いから離れるを妄想してみました。
あくまでも私の中の沖田さんは、かなり、怖がり…というのも変ですね。失う事を恐れているという妄想です。傍にいたいからこそ離れたい。けれど、一人は怖い。一人は寒い。けれど、離れたい。離れたくない。そんなイメージで書いてみました。
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