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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

袖引き。(薄桜鬼:沖田×千鶴)

2011-04-08-Fri-04:55



【袖引き。】

薄桜鬼:沖田×千鶴






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障子を開き、廊下へと出る。日の光が差し込む庭を一瞥した後、沖田はその向こう側に居る存在に気がついた。
いや、気がついたと言うには語弊があるだろう。
沖田は障子を開き、廊下へと一歩でるその瞬間まで、その存在を探していたのだから。


特に用があったわけではない。ならば何故…と問われそうだが、そんな事、沖田自身にすら解らないのだから仕方がない。
だが、そう…それでも敢えて言葉を探すとするならば、きっと、【暇だから】が一番しっくりくるのだろう。
隊務の間にふと訪れた、けれど、然程長くは無い空白の時間。
道場で誰かと…そう。土方あたりと遊ぶのも良し。近所の子供を誘い、鬼ごっこをするのも悪くは無い。けれど、その時は、そのどれよりも、少女が居ないかと探したくなった。
見つけたら、きっと少女は驚いて、少し困ったような顔をするだろう。それを更に困らせてみたら、数ある暇つぶしの中で一番楽しいものになるに違いない。
だから、障子を開き、足を進め、顔を上げ、前を見つめ、早々に見つけたその存在に自然と笑みは深まった。だが…
「……ぁ、……て」
中庭を挟んだ向こう側。
もう一本。真っ直ぐ伸びる廊下に立つのは少女だけではなく、更に言えば、風に乗って届いた声は、野太い男のものだった。
普通の会話程度なら、遠いとまでは言えなくとも、かといって、近い距離でもないこの場所に、向こう側の声が届くことはない。けれど、沖田の耳には少女の目の前に居る男の声が聞こえてきていた。
内容までは定かではないが、その声は棘を含み、そう…怒声と言って良いもので。
「大声で怒鳴って、みっともないったらないよねぇ」
瞳を細め、声を落とす。
見たことの、ある顔だ。だが、名を思い出すまでにはいたらない。隊士である事は間違いないが、沖田の隊のものではないのだろう。
何が原因なのかは解らない。だが、沖田が顔を覚えていないくらいなのだから、少女と馴染みがある存在ではないだろう。ある意味、重要機密扱いである少女は、極度に接する人間を制限されていた。
とすれば、おのずと理由は限られてくるわけで。
「千鶴ちゃんも大変だ」
幹部から、特別扱いされている小姓。それが、今現在の少女の立場で、常に命を賭けている一般隊士からしてみれば、それが面白いわけもなく。時折、今のような難癖をつけられている事を、沖田は知っていた。かといって、どうにかしようなどという気はさらさら無いが。
視線を向ける先には、代わらず怒鳴る男と無言の少女。
沖田は怒鳴られている少女を助けるわけでもなく、少女と、男。二人の姿を瞳に収めながら、薄く笑みを浮かべた。
激高する男に比べ、少女はなんて冷静なのだろう。萎縮するわけでもなく、かといって食って掛かるわけでもなく、少女はただただその場に佇み、自分を怒鳴る男の姿を見つめていた。
何故か…。
「………」
尚も笑みを深めそうになる口元を片手で隠し、沖田はようやく一歩その場から動く。
何故か、などと問うまでもなく解っていた。
沖田の知る彼女は、年相応の、ころころとよく変わる表情を持っていた。
沖田が何かを言えば食ってかかってきたし、土方の怒声が響けば萎縮し、謝罪する。理不尽な事を告げられれば、悔しさに唇をかみ締め、平助や新八の前ではよく笑う。けれど、今、沖田が見る少女はそれをしない。
決して長くはない廊下。けれど、たどり着くまでに少なからず時間はかかった。その間も男の声は耳に届き、少女の声は届かない。
くつりくつりと笑みと共に揺れる肩。
ようやく、少女の背中が目の前に現れた。先に気付いたのは、少女の前に立つ男の方だ。閉じられた男の唇に、そこでようやく少女を取り巻く感情の波が僅かに動く。
何故、男が黙ったのか。そう、思っているのだろう。
だが、少女が答えを導き出すよりも先に、沖田は腕を伸ばし少女を捕らえる。
「随分と、面白そうな事をしているね」
第一声は、ソレ。
男の目に怯えたような色が混じる。それはそうだろう。幹部に気に入られている仕えない小姓。そう認識している男にとって、少女を気に入っている張本人に怒鳴っている現場を抑えられては言い訳など出来るわけもない。
「沖田さんっ!?」
言葉を発せぬ男の代わりに、腕の中から声が聞こえた。
小さな体が身じろいで、何とか沖田の腕から抜け出そうとするのは、間違いなく、沖田が少女を結果的に助けるようになったとしても、助ける事を目的としていない事を知っているからだ。
こんな所が面白いのだと、沖田は思う。如何にその他大勢に怒鳴られようとも、自分達にだけ反応を見せ、その他は全て聞き流す。
本人、気付いているのかは定かではないが、したたかなその姿は、何度見ても沖田を飽きさせる事はなく。
「ねぇ。何を言われていたのか僕に言ってくれるかな?」
瞳を細め、甘い囁きと共に言葉を紡いだ。
もちろん、男に与える影響は自覚済み。その証拠に、目の前の男は、更に怯え、足を一歩後ろに下げた。
だが、逃げる事など出来はしない。隊長である沖田を前にして背を向けて逃げ出そうものなら…
「…何も、言われてません」
千鶴の声に、明らかにほっとしたような男の表情。
「ふぅん?」
嘘だと気付かれている事は承知の上のその発言に、更に沖田は笑みを深めた。
下がっていいよと、男を帰し、沖田は少女を抱く腕に力を込める。
「ねぇ、何で泣き付かないの?」
解っていながら言葉を紡ぎ。
苛められたんでしょう?と更に少女を追い詰める。悔しそうに眉間に皺を寄せる様子に瞳を細め。
「泣いて、なんとかしてくださいって頼んだなら、君の頼みなら聞いてあげるのに」
甘い言葉で答えを促す。
少女が泣きつかない事など承知済み。
少女が悔しいのは、先ほどの男に対してではない。それが解るから。
少女が今、怒りを覚えているのは、先ほどの男に対してではない。それが解るから。
だから…
「なんでも、ありませんっ」
ドン…と、大きく体を突き飛ばされて、小さな体は抜け出した。
形ばかりの一礼と、すぐさま踵を返して去っていくその姿。けれど、瞬間見えた瞳の色は、沖田が見たかったその色で。
「またね」
向けられた背中に手を振った。
背が消え、まるで何事も無かったかのようにゆっくり流れる静かな時は、けれど…
「あぁ。面白かった」
落ちるその音は、沖田自身が自覚せずとも、甘やかで。



微笑みよりも、怒りを。怒りよりも泣き顔を。けれど、できるなら…誰も見た事のない少女の姿を。
引き出す術など、知らなくて。



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あとがき。

このお話しは、TLで、ひっそりと書いていたお話を手直ししたものだったりしています。大まかなストーリーは変わっていませんが、流れは大分変わったかなと。しかし、元書いたものを書き直すのは、少し大変だなと。付け足したりするのは、流れがぶった切れるので苦手だったりします。…あぁ、だから、変なのかorzともかく、今回のイメージは、子供が、お母さんの袖をひっぱって、こっちを向いてとせがむ。そんな感じで書いてみました。もしくは、好きな子ほど苛めちゃういじめっ子な感じ。
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COMMENT



かの様へ

2012-02-23-Thu-04:48
かの様、はじめまして。コメント、本当にありがとうございますっ!!薄桜鬼は、しばらく書いていないのですが、また、ぜひぜひ書きたいと思います^^コメント、本当にありがとうございましたーっ!

2012-01-23-Mon-14:15
主さんのかく文すごく好きです!!
もしお暇があったら、また薄桜鬼で
なにかかいてください!!

2012-01-23-Mon-00:16
主さんのかく文好きです。
よかったらまた薄桜鬼でかいてください!!

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