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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

【犬の皮を被った子供】緋色PS3 発売記念カウントダウン4日前

2011-05-23-Mon-23:58



【犬の皮を被った子供】

(慎司×珠紀)

緋色PS3発売記念カウントダウン 4日前






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「慎司くん」
 貴女が僕を呼ぶ声が、好きです。
「慎司くん」
 貴女が僕を、見る眼差しが、好きです。
「慎司くん」
 貴女が、僕に向ける笑みが、好きです。
「慎司くん」
 貴女が僕に触れる指が、好きです。
「慎司くん」
 貴女が僕に………

 西日が、山の向こう側へと消えようとしていた。
 視界に入るのは、見慣れた屋上と、その手すり。
 長く伸びる影は、二つ。
 既に、最後の鐘を鳴らし終えた校舎に、然程、人は残っていないのだろう。
 少なくとも、屋上て佇む慎司の耳には、目の前の少女…珠紀以外の声は聞こえてきてはいなかった。
 足元には開かれたままの冊子。
 風によって数枚めくられ、最初の頁はすでに紙の束のどこかへと消えていた。


 慎司が珠紀と共に、この場所…屋上へとやってきたのは、三十分ほど前の事である。
 いつもであるなら、下駄箱で待ち合わせをし、共に家路までの道を歩きながら他愛ない会話をする。それが、恋人同士でもある慎司と珠紀の放課後の過ごし方で、日が暮れる前に辿り着いた宇賀谷家にて、美鶴も交え、共に夕食を取る。それも、いつもの流れのはずだった。
 そこに、たまに…時間が遅くなったり、人数が増えたりする事はあったけれど、でも、大きな流れは決して変わる事はない。その事に、不満があるわけでは勿論なくて、ただ、今日は…
「珠紀さん。どう、思いますか?」
 逆光になり表情が見え難い少女に向けて、慎司はゆっくりと口を開く。
 
 慎司は、珠紀が好きだった。

 いや、だった…ではない。今も、少女が好きなのだ。
 数か月前の戦いで出会った一人の少女。
 最初は、本当に一目惚れで。
 好きになってはいけない…なんて考える間もなく惹かれていた。
 気が付けば、引き返せない所まで来ていて。
 ついには、少女無しではいられなくなっていた。
 憧れて、憧れて、憧れて。
 少女も自分を好きだと言ってくれてはいるけれど、けれど、少女の周りには自分が尊敬する幼馴染が常に存在していて。
 どれほど頑張っても。
 どれほど近づいても。
 焦る想いは消える事はなく…

 だから、これはチャンスだと思ったのだ。

「どう、思う…て」
 慎司の言葉を辿るように、少女の口が言葉を紡ぐ。
 ぱらぱらぱらと、相変わらず床に落ちた冊子はページを捲る。

『劇に、出てほしいって言われたんです』

 それが、慎司が珠紀をここへと誘った口実だった。

 劇の内容は、ベタすぎるラブストーリーで。
 どこぞのお姫様と、どこぞの王子様が最後には結ばれる。そんなお話し。
 もちろん、慎司にやって欲しいと言われたのは王子様役である。
 出演依頼と共に渡された台本は、他の人には見せないで欲しいとは言われたけれど…
「慎司くんは…」
 最初は楽しそうに台本を見て、口を開いていた少女の声が聞こえなくなったのは、いつからだったのか。
 ページを捲る音は徐々にゆっくりになり、最後にはピタリと止まっていた。
 ふらつく眼差しが、彼女が例のシーンに気づいた事を現しており、けれど、発さぬ声に言葉を選んでいるのだろうと安易に予想がついた。
「キスシーンが、あるみたいなんです」
「っ」
 気づいていただろうに、目の前の少女が息をのむ。
「僕は…受けてもいいかとも、思っているんです」
「………」
 握られる少女の手。
 空気を揺らす、感情。

 珠紀さん。ごめんなさい。

 声に出さずに言葉を紡ぐ。
 僕は、本当は解っていたんです。
 僕は、本当は気づいていたんです。
 こんなことを言えば貴女が傷つくだろう事。
 こんな事を言えば、貴女が泣きそうになるだろう事くらい。
 貴女の想いを疑った事はない。
 それは本当。
 けれど…


「姫。僕は、この剣に、姫を愛し続ける事を誓いましょう」
「し…んじ、君?」
 それは、台本の一節。
 王子はその後、姫を抱き寄せ口付けをするのだ。
 全校生徒が見守る中。
 愛しい少女を客席に見つつ。
「愛しい貴女に、口づけを」
「…っ、だ、だめっ」
 上げられる少女の顔。
 橙だった空は藍の色が広がっていた。
 眩しいくらいの光は既になく。そのせいか、ようやくはっきりと見えた少女の表情。
 苦し気に眇められた眼差し。
 寄せられた眉。
 伸びた指は慎司の制服をつかみ、一歩進んだ足は慎司との距離を大きく詰めた。
「珠紀さん。劇…です」
「そうだけどっ」
 たいして違いの無い目線の高さ。
 少女の眼差しが潤んでいるように見えるのは、きっと慎司の気のせいではないのだろう。
 可哀そうに。
 それが誰のせいかも気づきつつ、慎司はそう思わずにはいられない。
 ここに誘ったのも。
 こんな事を言い出したのも。
 少女にこんな想いをさせたのも、全部、自分が自分を信じられないそのせいで。
 それでも…

「珠紀さん。言ってください。…どうして、そんなに、嫌…なんですか?」

 自分を満たすためだけに追い詰める。

 少女が好きで、好きで、好きで。
 どうしようもなく、少女が好きで。



「…っ、他の人と…キス…しないで」




 届いた音に、音を、重ねた。



 犬に変じた幼い子供。無邪気な顔を見せながら
 甘い牙を突き立てた。



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あとがき。

ギリっ!ぎりぎりっ!!!!とりあえず、今日のうちにアップできました。
予想外に、慎司君がダークです。…おかしい。ネタは、ラブシーンがある劇に出てほしいって言われて、わざと珠紀に行って、嫉妬させるぞ大作戦で、そのまんまなんですけども、いかんせん、慎司君が病みました。
慎司君の好きなところ。珠紀に年下として見られ(すぎ)ているところです。
そこに、「僕は、先輩に男として見てほしい」と、思っていたら萌えます。これは、緋色3前なので、慎司君。緋色3ほどは、未だ、成長してないんですよ。成長期。
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