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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

序曲(緋色:真弘×珠紀)

2013-08-17-Sat-00:00


【序曲】

(緋色の欠片:真弘×珠紀)


※甘くないです。真弘先輩と珠紀の絡みも、ほぼなしです。
でも、先輩ハピバSSです。(謎)








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 あぁ、これは夢だ。




 青い空に茶色の大地。
 枝を揺らす緑の木々は、風と共に歌を謳う。
 それは見慣れた景色で、嗅ぎなれた香りで。
 ともすれば現実とすら錯覚してしまいそうな程に慣れ親しんだその場所でありながら、真弘は『これは、夢だ』と、自覚していた。
 真弘が立っているのは、季封村から唯一外の世界に出る事ができる、扉とでも言うべきバス停があるその場所で。
 まず、ここで夢である確証が一つ。
 真弘はそもそも季封村から出る事を許されてはいない。
 ここに来るまでにある結界が、真弘をここに来る事を拒むためだ。
「別に、来たいと思った事はねぇけどよ」
 ぽつりと落とした音は、己の予想よりも大きく己の耳に届く。
 気が付けば、木々を揺らしていた風がピタリと止まっていた。

 何故、こんな夢を見るのかは解らない。
 自分はとっくに己の運命を受け入れているし、今更、逃げ出したいとも思っていない。
 一見平和に見えているこの季封村であっても、そう遠くない未来に封印が敗れる可能性だってあるだろう。そもそも、自分はそのために生まれているのだから。
 仮に、封印が破れなかったとしても、更に封印を強化するために使われるだろう事は火を見るよりも明らかだ。
 どちらにしろ、天命を全うする事は無理だろう。

 落とした視線に己から伸びる影が見える。
 然程長くないそれは、今が昼近い時間だという事を示していた。
 足は、前にも後ろにも進まない。
 夢であるのだから、せめて、一歩前に行けばいいとすら思うのに、それすら出来ない己自身に苦笑する。
「怖いのか。俺は」
 ため息と共に落とした声。
 せめて、目覚めてくれれば…そう、思うのに。

「…………」


 違和感。
 いや、そもそも違和感まるだしなこの夢の世界で違和感というのも変な話だが、それでも、先程までとは違う何か。
 世界が変わったわけでは無い。
 場所が変わったわけでも無い。
 ただ…
「音?」
 上げた視線の先に、小さな箱のようなものが見えた。
 徐々に大きくなるそれは、同時に砂埃とエンジン音をも真弘の耳に届けてくる。
 見た事は…ある。
 遠目からではあるが、唯一、この季封村へと外の人間を運んでくる乗り物。
 けれど、ここまで近くで見たことは…
 目の前で止まるバス。
 同じく目の前で開かれる扉。
 車内アナウンスなのだろう。妙に鼻にかかった『季封村』と告げる音声が耳に届いた。
 乗れるのだろうか。
 一瞬考えるも、動かない足。
 心臓の音が、酷く、響く。
 乗れない。
 乗れるわけがない。
 逃げ出すことなど、そもそも…
「…あのぅ」
「っ!?」
 ふいにかけられた音に、真弘はようやくバスから降りてきた人物に気が付いた。
 真弘が目の前に居るせいで降りられないのだろう。
 困ったように傾げられた首。
 顔は…目深にかぶった帽子のせいで見る事はできないが、それでも服装から少女である事は理解できた。
「あ、悪ィ」
 一歩下がれば、テロップから少女が下りる。
 目の前で閉ざされるバスの扉。
 それをほっと見送り………
 茶色の髪が、視界に入る。
 少女が歩き出したのだ。
 進む先は、疑いようもない。このバス停で降りたからには、行く場所など一ヵ所しかないのだから。
 迷わず進む少女の後ろ姿。
 胸騒ぎが、する。
 行かせてはならない。そんな、気がする。
 巻き込むな。と。
 引き留めろ。と。
 何故、そんな事を思うのかはわからない。
 自分ではない。
 自分の中にある、何かが、そう訴えているのだ。
 ならば、自分は彼女を引き留めなければ。
 そう、思い…
「お…」
「早く」
 かけるべき声が遮られる。
 少女の足は止まっていた。
 体ごと振り返り、重そうな旅行鞄を両手で持って、帽子のせいで表情は見えないけれど、それでも少女は。
「何をしてるんですか。早く行きますよ」
「は?」
 笑って、いた。
「こういう時は先輩、いつも前、歩いているじゃないですか。なに、のんびりしているんですか」
「な…」
「それにですね。まず、帰ってきたらかける言葉なんて決まっているじゃないですか。何やってんですか。先輩」
「お…」
 知らない、少女だ。
 見た事のない、少女のはずだ。
第一、 顔が見えない。見えないのに解るはずがない。それなのに。
「ねぇ、先輩」
 重そうなカバンから、少女の腕が一本外れた。
 途端に傾ぐ肩。けれど、少女は持ち直そうとはせず、外れた手を真っ直ぐ前に。そう、真弘の方へと伸ばし。
「行きましょう」
 光が、はじけた。



「………っ」
「起きたか」
 肌を刺す太陽の光。
 耳に届く蝉の声。同時に落ちてきた、親友…祐一の声に真弘は眉間に皺を寄せながら瞼を開く。
「…っ、ぁ…っちぃ…」
 腕で額を擦れば、ぬるり…と汗の感触。どうやら、己は決して健康的とは言えない場所。細かく言えば、学校の屋上にて寝てしまっていたらしい。しかも、この真夏の炎天下の中。
「だろうな。死ぬ一歩手前に見えた」
「だったら起こせ」
「……もう少したったら起こそうとは思っていた」
 その前に死んだらどうするのだ…と訴える気力は今はなく、真弘は緩慢な動きで体を起こす。
 己が横になった時は、太陽が昇りきっていなかったせいか、油断していた。
 太陽の位置を見るに、寝てから2,3時間ほどだろう。昼になっていたら、それこそ寝込む事態…下手したら死んでいたかもしれない。
「まぁ、んな簡単に死ねるようなもんでもねぇけどな」
「どちらにしても、あまり関心はしない」
「…悪ィ」
 ハァ…と息をはきだし、立ち上がると大きく伸びをした。
 空は青い。
 夢の中の空と似ている…けれど、夢の中の空よりも、青の色が強いのは、今が夏という季節のせいだろう。
「あれは…秋…か?」
「真弘?」
「んや、何でもネェ」
 瞬くたびに消えていく夢の中の出来事。
 あと数分もすれば、どんな夢であったのかも記憶から消えてしまうのだろう。
 だが…
「なぁ、祐一」
「何だ」
「…なぁ、祐一…」
「………」
 笑顔、が、見えた気がしたのだ。
 見た事のない少女の、満面の笑み。
 伸ばされた腕は、夢の中の自分は取る事が出来なかったけれど、でも、その手を取れるような、そんな気がした。
 だから…
「美鶴、美味い飯作ってくれてっかな」
「あぁ。お前の誕生日だからと、肉を多めにすると言っていた」
「おっしゃ!」

 少し。
 ほんの少しだけ、誕生日というものを祝ってやりたくなったのだ。

 年を重ねても、見る事のない未来を、何故だか今日は、ほんの少し…ほんの、少し、だけ。




Happy Birth Day
これが、未来に訪れる誕生日プレゼントの始まりなのだと。その時は誰も気づかなかった。
当の、本人すらも。





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あとがき

先輩、お誕生日おめでとうっという事で、今回は甘さの欠片もなくなりました。
今まで、お誕生日→先輩と珠紀が二人でお祝いバージョンだったので、今回は過去の先輩にお誕生日おめでとうを書きたいなーと思って書いてみました。
気付かないくらいにささやかなお祝い。
けれど、ほんの少しの幸せ。
未来につながる欠片。
そんなイメージです。
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COMMENT



Re: お元気そうでよかったですo(*⌒―⌒*)o

2013-09-15-Sun-23:16
桐越さま。

こんばんはっ!お久しぶりですっ!!!
あぁぁぁ、もう、本当にご無沙汰してしまっていて申し訳ございません(ジャンピング土下座)
辞めてはいないです。
まだまだ乙女ゲ熱はあふれるパッションのまま継続しております。
遅筆になってしまってはおりますが、徐々に徐々に更新はしておりますので、またいらしてくださったら嬉しいです。

来てくださって、コメントもくださって、本当にありがとうございました^^

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2013-08-25-Sun-20:58
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