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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

自覚、その後。

2007-02-28-Wed-03:24


 流れる指先と、耳に届く鈴の音。
 一段高い舞台の上で舞うその様に、一瞬…
 ほんの一瞬、ぶれる視界。
 走馬灯のように横切る映像は、自分であって、自分のものではない記憶。

 瞬間……理解した。


 そう、少女は玉依姫なのだと…





「綺麗…だな」
 ぽつりと…布の上に落ちた染みのように紡がれた言葉に、遼は視線をゆっくりと隣へ向けた。
 並ぶ椅子は六脚。
 そのうちの一つには自分が座り、隣には…
「たかだか…舞だろ」
 両手を組んで、言葉を紡ぐ。
 たかだか…なんて、思っていない。
 今まで見たどんな舞よりも、美しく…どんな舞よりも清らかで…
 だけど…
 しっかりと交わる、瞳と瞳。
 ゆっくりと寄っていく、相手の…真弘の眉間に皺に、わざと挑発の笑みを浮かべ、再び視線を舞台に移す。
 指先が流れるたびに。
 少女の眼差しが閉じられるたびに。
 揺れる空気と、零れるため息。
 それは、初めから予想出来ていた事なのだけれど、それでも、苛立つ感情を抑える事が出来ない。
「…………認めろよ」
 先ほどのお返しなのだろうか。
 反らした眼差しと共に振ってきた声に、僅かに上がる眉。
「黙れ」
「解ってんだろうが、オマエも」
「煩い。黙れ」
 キシリと軋む椅子。
 視界に端に映るのは、笑みを浮かべる真弘の口元。
「アイツはオマエのもんじゃねぇ」
 指先に力が入る。
「…俺のものだ」
「違う」
「………アイツは…玉依だ」
「それがどうした」
 解らないわけはないだろう?…と、声には出さずに伝わる言葉。
 横目で睨みつければ、笑みを浮かべたまま真弘は再び舞台へ視線を向ける。
 募る苛立ちを抑える術が見つからない。
 徐々に激しくなる舞は、最後が近いのだろう。
 散る雫が空に消え、少女の笑みが人をカミを魅了する。

 何故…

 噛み締めた奥歯が音を立てる。
 
 何故…

 刻まれた眉間の皺は本数を増やし、赤い眼差しは、ただ、ひたすらに少女を見つめる。

 
 あの戦いの時。
 確かに少女は自分のものになった。
 向けられる笑みも、零れる涙も、過去も現在も未来も…
 少女は自分のものなのだと、そう実感できていたというのに…
 少女が玉依姫でなければ、これほどに惹かれる事は無かった。
 少女が玉依姫でなければ、こんな想いを持つ事も無かった。
 解っている。
 そんな事は、解っているのに…


 シャン


 最後の鈴の音が鳴り、フワリを舞う布の先が舞台に落ちる。
 口々に賞賛の声を上げる声に、瞳を閉じ…
 そして、開く。

「あんま、駄々こねるんじゃねぇぞ」
 立ち上がったと同時に耳に届く声。
 睨み付ければ、言葉の代わりに笑みを返されて…


「…アイツは俺のものだ」
 掠れる声。
 相手の眼差しを感じるも、振り返らずに歩き出す。

 顔が…見たかった。
 声を、聞きたかった。

 自分のものだと…そう、言って欲しくて…







「遼!」
 向けられる笑み。
 差し伸べられる腕。
 どのくらい待っていたのだろう。
 舞が終わってから、大分時間は経っているはずだ。
 約束とも言えぬ約束をした自覚はある。
 待っていてくれると、根拠の無い自信もあった。
 けれど…
 交し合う言葉。
 風に乗り、香るのは消えた篝火の残滓。

 別に…
 何をしたかったわけではない。
 約束した時は…
 顔を見たかったと言ったなら、やはり少女は笑っただろうか。
 
「あのね、遼?」

 声の色が変わる。
 紡がれる言葉に、眉間に皺が寄って行くのが解る。
 ここには誰も居ない。
 ここには、自分以外の誰も居ないのに…
 少女の口から漏れる、自分以外の存在を示す単語。
 何故少女は自分以外の存在を思うのだろう。
 伸ばした腕。
驚きに開く少女の眼差し。
揺らぐ体を、そのまま倒す。
 散らばる茶色の髪が、木製の床に散らばり…

 そして……

「俺だけの玉依姫になれ」

 そんな言葉を…言うつもりは無かった。
口から出た言葉は、自分でも驚くほどの、子供っぽい言葉。
 瞬間、真弘の言葉が脳裏を過ぎる。

「おまえは俺だけの主でいろ」

 止まらない。

 言葉が欲しかった。
 誓いが欲しかった。
 揺らぐ心の支えが欲しかった。
 きっと、少女にこれを言ったなら、らしくないと…笑われるのだろうけど…
 だけど…
 誰にも渡せない。
 誰にも分ける事など出来ない。
 
 この声も、この温もりも、存在、何もかも…
 自分以外のものに、欠片も与えるつもりはない。

 だから…

「おまえは俺のものだ」

「俺だけの主だ」

 何度も言い聞かせる。
 忘れてしまわないように。
 他の誰にもその眼差しを向けないように…

「わかったな」

 揺れる風。
 声が僅かに震えるのは、否定の言葉を聞きたくないから。

 けれど…


 ゆっくりと広がる少女の笑み。
 仕掛けられた悪戯のように、提示される妥協案。

 いらないだろうと…
 そう言ってしまうのは簡単だけれど…

「解った」

 そうする事で、少女が自分だけのもので居てくれるのなら…





 探る手のひらはいつまでも温もりを求め、揺れる心は容易く溶ける。
 中天に上った月から姿を隠し、今だけはその目に自分だけを映し出して…



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あとがき。

最近頻度が高い遼珠です。…というよりも、FDをやってから、真弘センパイ意外のキャラを書く率が上がったというか…
このお話しの遼は、FDをやってから出てきた遼の姿だったりします。
遼は、珠紀をぎゅぅと抱きしめて、口じゃ余裕ぶっこいた事を言いながらも、抱きしめた腕は放せないといいと思います。
何か、拗ねた子供。
遼ファンには怒られそうですが、そんなイメージ。

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COMMENT



コマさまへ。

2007-09-26-Wed-23:20
こんばんは^^いらっしゃいませ~

うふ、うふふふふ(にやり)そうなんですよーっ!遼はですね、何気に甘えただと思ってっ(興奮)
エロエロなんですけど、こう、遼は思考が可愛い感じで、なんでしょうねぇ。体の大きな子供。先輩と逆ですね(笑)
遼のお話しは、猛獣の飼い方シリーズも控えているので、がっつり書かせていただきますっ。えぇ、近い将来に(いつだ)
そしてそして、いつもコメントありがとうございますー。コマさま、大好きですー!!

コンバンワ♪

2007-09-26-Wed-00:44
  こんばんわ~、朱音様♪
今日は遼のSsをまた読ませていただきまして・・・・。このお話、遼のお話の中で一番好きです♪(^^)

 なにげに一番甘えたサンな遼は、本当に可愛いです。母性本能くすぐられちゃいます。(笑)
 珠紀が出した「妥協案」にもチビっととまどいながらもやっぱり、やっばり「解かった」なんですね。(><)可愛いです~♪

 遼が珠紀を押し倒す(笑)までに何があったのか・・・・ナルホド♪です。
 いっくら遼でも、世間一般では「エロエロ大魔王」と称される遼でも、珠紀にあったとたん押し倒すなんて、そんな・・・あれだけベタベタしといてなんでそんなに欲求不○なんだー!(×△×)とFDでは叫んで笑っていたので、このお話を読んでスッキリしました♪
 また遼のお話、書いてホシイですです・・・♪

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