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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

猛獣の飼い方 10の基本-その3-

2007-05-04-Fri-22:33



 せをむけてはいけません




 いや、もう、正直に言っておこう。
 こうなる事を予測していなかったわけではないし、過去、何度かこんな事態に陥りもした。
 けれど、こんな…
 まさか、こんな場所でこんな事が起こるなんて、珠紀は欠片も想像していなかったのだ。


 よくよく考えてみて欲しい。
 現在、昼の12時を回った所。
 学校の通路を歩く生徒は、ある物は片手に弁当箱を。
 ある物は、菓子パンを持ちながら思い思いの場所へと移動を始めている。
 開け放たれた木造校舎の窓は、心地良い風を校舎内に運び……
 つまりは、どこにでもある、昼休憩なのだ。
 もちろん、珠紀も弁当を片手に、いつもの屋上に行くつもりもあったし、それは今現在も変わりは無い…にもかかわらず……
「あ、あの」
 零れだす声は、不思議と震えていた。
 目の前の廊下を歩いていく生徒が、不思議そうに珠紀を見るが、すぐに興味をなくしたように通り過ぎていく。
 珠紀の後ろには、科学室に続く扉。
 僅かに開いたそこに、人影は見えず…
 そう、見えはしなかった。
 開いた隙間は丁度、珠紀の頭一つ分。
 しっかりと閉まった暗幕は、室内に僅かな灯りすら入れず…だが、廊下より入り込む光のみが、細い線となって、室内の床を照らしていた。
 珠紀の足の向こうには、そんな僅かな光によって、よくよく見なければ解らぬほどの影。
 だから、廊下を歩くものは気づかない。
「…っ」
 揺れる肩。
 片手に持っている弁当が落ちそうになり、珠紀は慌てて抱きしめる。
 何故…こんな事になったのかは解らない。
 いつものように、遼を迎えに教室に行き、科学室から戻らないと、クラスメイトから報告を受けた。
 開けた扉の向こうは嫌に暗くて、何度か名を呼んでもしない声に背を向けて……
 僅かに捲られる、背中の上着。
 節ばった長い指がシャツに触れ、背筋を辿るように下から上へ。
 誰か…なんて、声に出さなくても解っている。
 何で返事が無かったのか…も、おくらばせながら気がついた。
「…り…ょう」
 頬に集まる熱を隠すように俯いて、きっと笑みを浮かべているであろう相手に声をかける。
 敗因は、油断した自分。
 ここの所…あの日から…
 喧嘩とも言えない喧嘩をしたあの日から、イタズラを仕掛けてこなかった相手に油断していた事は認めよう。
 だが、目の前には生徒が行き交い、日も高いこの時に来るとは思わないではないか…
「やめ…」
 引き出されるシャツ。
 スカートの隙間から、膝の裏を伝い、やはり、指のみがその肌を擦る。
 その度に、ピクリと震える体を楽しむように触れるだけのその指は、意地悪く、離れては…触れを繰り返す。
 足を前に進めばいいだけの事。
 そんな事は解っているのに。
「………俺を、呼びに来たんだろ?」
 いつの間にか立ち上がったのか、耳元で告げられる声。
 先ほどまで自分に触れていた指が、扉の縁を掴み、横にそのまま力を入れる。
 髪に触れる唇。
 唇が動くたびに、瞳を細め…崩れそうになる膝を、前へ一歩進めることで何とか留める。
 突然現れた遼の姿に驚いたのか、廊下を歩く生徒が僅かに眉を上げるもそれだけで…
 自分の横を通り過ぎ、離れていく背を睨みつける。
 一歩、二歩、三歩…
 肩越しに振り向いたその眼差しと視線が合わさり…
「歩けるのか?」
 笑みを含み、問われる声に上がる眉尻。
「歩ける」
 けれど…
「……先に、行っている」
 弧を描く口元が見えなくなり、再び離れていく背に一歩下がって…

 壁についた肩。
 かろうじて、その場にしゃがみこむ事こそ免れたけれど…
 早い鼓動に息を一つ。
「…っ、悔しいっ」
 今は…動けそうに無い。
 手の甲で頬に触れ、瞳を伏せて唇を噛み締める。
 あの時…不覚にも、遼という猛獣をカワイイと思ってしまった自分を忘れてしまいたい。
 猛獣は猛獣でしかなく…
 そう…僅かな油断も命取りなのだ…



【本日の教え】
-せをむけてはいけません-





お題は『リライト』様よりお借りしました。
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あとがき。

R12にしようか、些か迷った作品です。
でも、キスもなければ、エロシーンがあるわけでもなく…ただ、触っただけ。
でも、遼の場合は存在自体がR指定入るので、やっぱり入れておけば良かったかと些か後悔。
まだまだ、猛獣使いは半人前です。
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