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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

分け合う温もり。その1

2007-09-15-Sat-18:16


 見送りになんて行けなかった。



 青空に、ぽかりと浮かぶ雲一つ。
 頬を撫でる風は、少女がこの村に来てから、一月も経っていないにもかかわらず、かなり冷たくなっていた。
 まだらだった山の色は、今は赤と黄色に染められて、見るものが見れば絶景…とすら言えるその色合いを視界に入れず、拓磨が見つめるのはただ一つ。
「行かないのか?」
 ふいに耳に届く声。
 まるで、空気のように透き通るその声音を発する人物を、拓磨は知っていた。
 いや、知っていた…というには御幣があるかもしれない。
 知っている…と一言で片付けてしまうには、彼と自分との間柄は浅くは無く、だからと言って、彼が自分を知るほどに、自分は彼の事を知ってはいない。
 一つ年上の狐邑祐一という存在を語る事が出来るのは、やはり一つ年上の先輩、鴉取真弘しかいないだろうから。
 それでも、自分にも解る事は一つだけある。
 いや、長年の経験から学んでしまった…とでも言うべきか。
「………」
 屋上から下を見下ろし、拓磨は瞳を一箇所へと向けたまま、その問いには応えない。
「待っているんじゃないのか?」
 落ち着いた、諭すような声音。
「寝てたんじゃないンすか?」
 問う声に顔を向けなくても、彼が笑みを浮かべているだろう事は想像できる。
「寝たフリをしていた」
「またスか」
 この一つ年上の先輩は、顔に似合わずイイ性格をしている事を、拓磨は身を持って知っていた。
 一見すれば人を寄せ付けない美形。
 付き合っていけば、どこか抜けた美形。
 だが、その実態は……
「祐一先輩こそ、見送りに行けばいいじゃないスか」
 声と同時に振り返る。
 金色の瞳が細められ、ゆっくりと広がる笑み。
 だが、その瞳に浮かぶのは、どこか面白がるような色。
 さすが、あの真弘の幼馴染をやるだけはある。
 祐一が振り回されてばかりとの印象があるものの、実際、振り回されてはいるのだろうが、祐一自身好んで振り回されているようにすら見える。
 時折混じる、真弘をからかう声等は本当に活き活きしていて、まるで普段の彼からは予想が付かないほど。
 そのターゲットに自分も含まれている事は薄々ながら感じてはいたのだが…
 立ち上がる相手の様子を最後まで目を追わず、拓磨は再び屋上の向こう。
 校庭を通り過ぎ、畦道を横切り、電柱を三本越えた更に先。
 二つの山に挟まれたその麓…バス亭へと視線を向けた。
 姿は見えない。
 だが、きっと、一人でほてほてと暢気に歩いている事なのだろう。
 その姿が容易く予想でき、思わず口元に浮かんだ笑み。
 見送りには行かない。
 行けない。
 姿を見てしまったら、きっと、行くなと…そう言ってしまうから。
 彼女が選び、進んだ道。
 妨げたくはない。

 耳に届く音。
 硬質な金属同士が擦れあう…そう、まるで、扉が開いたかのような。
「そういえば…」
 続く声。
 先ほどよりも随分遠くに聞こえる。
 だが、その音ははっきりと、拓磨の耳に届き…
「真弘が見送りに行くと言っていたな」
「!?」
 勢いよく振り返る。
 思わずフェンスを握った手に力が入った。
 僅かな逡巡。
 躊躇い。
 だけど、それ以上に…
「それを、早く言ってくださいよっ!」
 声と同時に走り出す。
 走馬灯のように駆け巡る…そう、あれは、かつての真弘と珠紀の姿。
 同年代で、クラスメイトで、そんな自分よりも交わす言葉は彼との言葉のが多かった。
 楽しそうに瞳を細めながら交わしていた言葉。
 今でも想う事がある。
 あの時、あの瞬間。
 真弘が珠紀に想いを告げていたのなら、こうして彼女は自分を選んでいたのだろうか。
 想いを疑っているわけではない。
 ただ…
 認めたくはないけれど、正直、勝てる気がしないのだ。
 たった一つ。
 されど、一つ。
 その一つの年の差がこれほどに大きいなんて…
 階段を下りていく祐一の隣を通り過ぎ、向かう場所はただ一つ。
 手のひらを握る。
 注意する教師の声が聞こえる。
 こんな自分は格好悪いと、そう思う。
 繋いでいたその手が離されはしないか。
 見つめていたその眼差しを他に向けられたりしないだろうか。

 浮かぶ少女の笑顔。

 見せたくない。見られたくない。
 けれど、それ以上に…少女の側を離れたくは無い。


「素直じゃないな」


 遙か後方に居るはずの祐一の声が、何故だか拓磨の耳に届いた。



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あとがき。

前回、拓磨が可哀想な感じだったので、今回は拓磨幸せ話しでいきたいと思います。
でも、私が書く拓磨は真弘先輩同様、幸せ系だとそんなに格好良く書けないんですよね。
真弘先輩と同じく(強調)
このお話しは、いただいたリクエストの中の一つ。【戦いが終わった後、拓磨が珠紀を待っている間、どんな風に思っていたのか…】を考えながら書かせていただきました。
まだ、珠紀帰ってないじゃんというのは、アレです。こう…すみません、ここから書かないと、自分の中での拓磨が動かないというか何というか…力不足です。ごめんなさいー(涙)
精進していきたいと思います。

※このお話しは、ぷち様のみお持ち帰り可能です。※
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COMMENT



葉月さまへ。

2007-09-24-Mon-23:50
葉月さま、こんばんはー。そして、了解いたしました^^
オールキャラですねっ。えとえと、オールキャラは緋色のキャラでOKですか?
緋色+翡翠キャラとは別の…という事でよろしいでしょうか。
葉月さまを満足させる事の出来る作品を目座し、頑張ろうと思いますので、気長にお待ちくださいませ~……う、い、一生懸命、早くに頑張りますっ(敬礼)

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2007-09-24-Mon-22:16
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お嬢さまへ。

2007-09-18-Tue-03:55
うぅ(涙)わ、解りました…とりあえず、お仕事が落ち着いてから…
私も、めっきりスカートなんて代物とは無縁になりました。
冷えは辛いですよね。本当に(しくり)
カズキヨネ様の絵はやっぱり素敵ですよね、色々と妄想のしがいが…(笑)
何気に、守護者は皆して珠紀を取り合ってくれたら良いと思いませんか?

と、えとえと、拓磨の「手のひらを握る」でしょうか。うーん、私の文章力が無いせいですね。ごめんなさいー。
ニュアンスとしては、手を握って、ぐっと焦る気持ちを抑えるような間隔です。精進いたします~
ではでは、コメント、有難うございました^^

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2007-09-16-Sun-20:58
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お嬢さまへ。

2007-09-16-Sun-19:44
お嬢さま、こんばんは。
もう、月のモノって、どうしてあぁも痛いんでしょうね。病院…病院は、そのうち…そのうち(ダメ人間)や、その、病院って苦手なんですよね。
…て、20代後半って…Σ(〇■〇)私も20代後半ですよっ!
しかも、子供生んでませんし…これは、本格的に行かないとダメですね(涙)…ら、来月までには…

と、さてさて(話しを反らした)リク、ありがとうございますーっ!ファンブックのイラストは私も見ましたよ。あれは、あれはっ、もう、萌えーっ!!ですよねっ!
うわぁ、お時間かかっても宜しければ、ぜひぜひ書かせていただきます。三角関係大好きですっ!というか、あの珠紀ちゃん可愛いのでっ、書かせて欲しいですっ(挙手)…誰視点にするかとかはご希望ありますでしょうか。一応、考えているのは拓磨と真弘視点で書いていけたらなぁと考えてはいるんですが…

そしてそして、またしても誤字(涙)はい。「言って」に直しましたー。
何回も見ても、自分だと見逃してしまうんですよね。うぅ、気をつけます(涙)ではでは、コメントありがとうございました^^

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2007-09-16-Sun-17:35
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