fc2ブログ

朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

朧月。(前編)

2008-03-22-Sat-15:55
※注意※

このお話しは、アンケートで頂いたコメントを元にして作らせていただきました。
祐一×珠紀前提となっておりますが、珠紀が生贄となり鬼斬丸を封印したという前提です。
幸せとは程遠く、流血、死ネタ、ダーク、ともかく、痛い感じがたっぷりと詰まっておりますので、それでもよろしければこのままお進みください。








【朧月。】







 腕を伸ばす。
 指で触れる。
 浮かぶ笑み。
 零れ落ちる雫。
 光が舞い散り。
 湖面へ沈む。

 枝が揺れる音も
 虫の声も
 風のざわめきも
 全てが消えて、ただ、残った永遠の静寂。
 音は聞こえない。
 声も聞こえない。
 光すら見えない。
 この世界は闇に沈んだ。


 ひらり
 目の前を横切る緋色の雫。


 一体いつからこうしていたのだろう。
 足元に広がる紅の華の中央で、祐一はゆっくり辺りを見回した。
 場所は八畳ほどの和室。
 中央には木製の机。
 庭に面した障子は閉じられ、紅葉が描かれている廊下と部屋とを隔てる襖には新たな華が散っていた。
 外に出れば月が辺りを照らしているのだろう。
 障子の隙間から差し込む光が、うっすらと室内を照らしている。
 人の気配は、無い。
 立っているのは祐一一人。
 そう…一人だけだった。


 いつから…


 再び思いついた問いに、祐一はゆっくりと顔を上げる。
 カチリ
 時計の針が一つ進み、低い鐘の音が時を告げる。
 いつから…なんて、決まっている。
 記憶が繋がった、あの瞬間から。
 光が失せた、あの時から。
 不思議と静まる思考。
 冷えていく感情。

『そう、貴方はケモノで居る事を選んだのね…』

 まるで、これから祐一が何をやるのかを解っているかのように、静紀は祐一を見つめ、そう、告げた。
 濃い…錆びた鉄の香り。
 季節外れの風鈴が、風に攫われ、音を立てる。


「……珠紀」


 琥珀色の眼差しを下ろし、見つめるのは己の指先。
 こびりついた紅は、爪の間までも入り込んでいた。
 体に纏いついた血臭も、そう簡単には落ちそうもない。
 けれど、それで良い…


 玄関の扉が開く音が聞こえる。
 廊下を走る数人の足音。
 肩越しに振り返る。
 襖を開き、覗く顔。
 驚きの眼差し。
 咄嗟に目を背けるもの。
 真っ直ぐに自分を見つめるのは…


「真弘」


 くしゃりと歪む表情。
 何故…そんな顔をするのだろう。



 嗚呼、そうか…



 浮かぶ笑みを隠そうともせず、祐一は一歩下がると障子に近づく。
「待て、祐一っ!」
「遅い」
 更に、もう一歩。
 開かれた障子。
 照らし出される惨劇。
 人であったものの末路。
「馬鹿野郎っ!戻れっ!」
「…戻らない」
 おそらく、もう、自分は…





 薄れ行く過去。
 風化する記憶。
 それでも確かなものがそこにはあった。
 暖かな温もり。
 優しい声音。
 前向きな笑顔。
 何よりも、生き抜こうとする、意思…
 だからこそ、守りたいと思った。
 だからこそ、少女の幸せを、願った。

 けれど…

「俺は、カミにはならない」
 カミには、なれない…

 少女を否定する世界。
 少女無くては生き残れない、そんな世界なら…

「…いっそ、滅んでしまえばいい」



 何を捨てても失ってはならないものがあった。
 何を捨てても守らなければならないものがあった。
 間違っているのは自分。
 そんな事は解っている。
 それでも…


「真弘…俺を、止めろ」
 青い炎が体を包む。
 庭へと出た祐一を、白い月が照らしていた。
「…っ、こんな事を、珠紀が望んでるとでも思ってンのかよっ!」
 怒りの滲む声に、浮かぶ笑み。
 追ってくるその動きに、瞳を伏せる。
 そんな事は解っている。
 こんな事をしても少女は喜ばない。
 解っている。
 けれど…
償いでも、怒りでも、悲しみですらない。
 腕を伸ばす。
 宙へと走らせる指を追うように、ポツリポツリと灯っていく青い、青い…炎。
 琥珀色の眼差しは金色へと変わり、ケモノである証が体に変化をもたらしていく。
 相手の腕には、不安定ながらも緑色の刃。
 苦しそうに瞳を細めながらも……
「俺は…オマエを許しちゃいけねぇ」
「あぁ」
「手を抜かねぇぞ」
「………解っている」
 真弘の足が、大地を蹴った。


==========================
あとがき。

それは、怒りよりも哀しみよりも、もっと深い絶望。
祐一先輩が珠紀という存在を見失った時感じるのは、そんな想いなんじゃないかと思います。
人である事も、守護者である事も放棄し、自分の逃げ道さえもつぶし。滅びる事を望む。
こんな祐一先輩は祐一先輩じゃないと思われるかもしれませんが、どうしても、私の中の祐一先輩は、珠紀が居なくなった時、怒ったり、悲しんだりとかしないんですよね。他の誰かのルートだったら、珠紀の幸せだけを願うんだけれど、祐一先輩ルートで珠紀が生贄になったら、結局、こんなストーリーしか浮かばなかったんです。
スポンサーサイト



COMMENT



優紀ちゃんへ。

2008-03-22-Sat-23:20
優紀ちゃん、こんばんはー。
ここから↓へメールでのお返事意外のお返事ですー。別名、祐一先輩語り…という…とか(笑)
そうなんですっ。そうなんですよーっ。うわぁ、祐一先輩ファンの優紀ちゃんにそう言っていただけてとってもとっても嬉しいです。
私も、祐一先輩が憤ったり、泣いたり、感情を表に出すシーンがどうしても思い浮かばなかったんですよ。
ただ、ただ、哀しくて。そんなイメージばかりが浮かんでしまって。喪失感。
存在する事の意味を失って、それでいいと思ってしまう。それが祐一先輩なんですよねっ。
同志ですっ、優紀ちゃんっ!
これからも、優紀ちゃんに見捨てられないよう頑張りますので、よろしくお願いいたしますー
ではではこの辺で。コメント、本当にありがとうございました^^

管理人のみ閲覧できます

2008-03-22-Sat-22:00
このコメントは管理人のみ閲覧できます

コメントの投稿

HOME