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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

玻璃ノキオク。(陸×珠洲)

2008-03-27-Thu-20:22




【玻璃ノキオク。】

(陸×珠洲)















 記憶に残るのは、ただ真っ直ぐに前だけを見つめた、壊れそうなほどに透き通った茶色の瞳。







『…………えぇ』
『…そうね…………でも』
 ふいに訪れる意識の浮上。
 それは、音を立てる雨戸のせいだったかもしれないし、激しすぎる雨音のせいだったのかもしれない。
 どちらにしても、陸の意識は眠りの淵から浮かび上がり、眠そうな眼差しが姿を現した。
 ぼやける焦点。
 入り込む情報を瞬きをする事で消化して、そして、ようやく気づく事が一つ。
 隣に眠るはずの、大好きな姉の姿が、見えない。
「おねえちゃん?」
 目を擦る。
 瞬きをする。
 欠伸をして、起き上がる。
 乱れた布団。
 ずれた枕。
「おねえちゃん?」
 再度読んで見ても、優しい笑みを浮かべる姿は見えなくて…
 台風が迫っていると言っていた。
 だから、昼のうちに雨戸を閉めて、隙間には新聞紙を入れ、古い建物のせいか雨が入り込みそうな箇所には洗面器を置いてみた。
 それはまるで、新しい遊びのようで楽しくて、だから…だろうか。
 夕方過ぎには疲れ果てて眠ってしまった。
 どこかの部屋から、ぼぉん ぼぉんと、時を数える音が聞こえ、その数は十二回。
 トイレにでも行ったのだろうか…
 陸は片手を畳について、起き上がり、乱れた浴衣の裾を正す事なく廊下へ向かう。
 くぅ…と夕食の入らなかった腹が、僅かに音を立てていた。

 予感……そう、言葉にするならばきっとそんな言葉。

 姉が居なければ独りで眠れないほど、陸は子供では無かったし、別にトイレに行きたいわけでも、つまみ食いをしたいわけでも無かった。
 確かに、空腹は訴えているが、だが、それ以上に…

 ぺたり ぺたりと足音が響く。
 激しいはずの家の外の音なのに、その時、何故か聞こえなくて…
「おねぇ…」
 一筋、廊下に光があった。
 家の明かりが消える中、その一室だけに光が灯り、僅かに開いた障子の隙間から、まるで廊下を遮るように伸びる色。
 僅かに耳に届く声は、母と、もう一人の姉の…
 そして…
 そして、そのまま陸はそこに居る存在の名を呼べなくなった。
 落ちた影。
 堕ちた影。
 ただ、真っ直ぐに光を見つめ、少女はそこに立っていた。
 表情を変えず、瞬きもせず、障子一枚隔てた向こうを、ただただ真っ直ぐと見つめていた。
 声をかければ障子は開くだろうに。
 一歩踏み出せば光へと行けるだろうに、それでも少女はそこに立ち尽くし、その向こうにいるだろう存在を見つめていて…

 あの時…からだろうか。

 自分が少女を守らなくてはならないと、強く、強く願うようになったのは…

 あれから、少女は何も変わらなかった。
 いつものように笑い、修行は嫌だと時折逃げ出し、それでも、陸の頭からあの光景が離れる事は一度も無かった。
 母と真緒の居る部屋を真っ直ぐ見つめ、入る事を諦めたような、それでも求めるようなあの眼差しを、あれから一度たりとて見てはいない。
 ともすれば夢かと思ってしまうほどに不確かなもので…


 それでも……

 夢ではない。
 夢なんかではない。
 自分には見せない。
 誰にも見せない、ただ一つの少女の真実。
 それが解るから…


 晴れた空。
 目の前には真っ直ぐに伸びた物干し竿。
 白い布が風に舞い、陸はそっと振り返る。
 鼻歌を歌い、廊下を雑巾で拭いているその姿からは、あの時の面影は欠片も見出せない。
 それでも…
「俺は姉さんだけを見てるから」




 だから、どうか、僕をミテ。






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あとがき。

裏珠洲、陸バージョン。足を止めて、振り返れば確かに求めるものがそこに在るのに、決して気づかない事こそが、玉依の血に巣食う闇。…という、イメージです。
同人用に書きましたが、例に漏れず、アップ作品が無くなってしまったため、こちらへアップ(笑)
何度同じ事を繰り返せば良いのでしょう…
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