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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

pianissimo (VitaminXSS)

2008-04-29-Tue-01:54


※注意※

このお話しは、ビタエボT6(銀児ルート ドリームED)を前提としています。
ですが、銀児×悠里ではなく、銀児×悠里 前提 悠里→←翼なので、三角関係が嫌いな方。
悠里が一途でないと許せない方。銀児が悲しいのは勘弁ならないっ!方は見ない方が得策かと思われます。
それでもよろしければ、このまま↓へとオススミください。












『pianissimo』


(銀児×悠里 前提 悠里→←翼)






 床に広がる白い布。
 細い両腕は床に縫いとめられ、天井を切り取ったかのように銀児の姿が視界に入る。
 悠里は瞬きもせずにそれを見つめ…
「離してください」
 冷たい声音で言葉を紡いだ。




 季節は春から夏にかけて。
 梅雨と呼んでしまうには、その日はとても晴れ渡り、まさに、絶好の…そう、絶好の結婚式日和でもあったのだ。
 場所は聖帝学園が所有する教会の一つ。
 メインは葛城銀児と南悠里。
 とある一件を得て、想いを通わせた二人はとんとん拍子に結婚までこぎつけた。
 むしろ、周りが早すぎるのではないか…と驚くくらい。
 そう、今考えれば急いでいたのかもしれない…と、悠里は思う。
 B6が卒業し、寂しかったせいもある。
 傍らの温もりに依存しつつあるのも自覚していた。
 だが…
「銀児さん…離してください」
 身に纏うのは白いドレス。
 床に散った赤い薔薇。
 髪につけていたヴェールは既に取れ、視界にすら入らない。
 床へと相手の手によって縫いつけられた両腕は、痛みを己に訴えて…けれど、そんな事、正直悠里はどうでも良かった。
 とにかく今は退いて欲しくて…
 早く、この部屋から出て、追いかけたくて…

 気づいたのはあの時。
 叩かれたドア。
 開いた隙間から覗く顔。
 両手いっぱいの薔薇を持ち、『Congratulations』と大げさなほどに明るく言葉を告げられた。
 結婚する事は言ってあったし、だからと言って何が変わるとも思わなかった。
 自分は銀児を愛していたし、大事だった。
 共に歩む事に異を唱えるような理由もなかった。
 幸せになれるし、なろうと思った。幸せにしてあげたいとも思っていた。
 けれど、それが単なる思い込みなのだと…何故、今まで気づかなかったのだろう。
 接する事はたびたびあって、大学を合格し、忙しいながらも学園にはよく顔を出していた。
 銀児と、まるで兄弟のようなやりとりは見ていてほほえましくもあったし、そんな二人を、これからも見ていけるのだと思って、幸せになっていた。
 自分は教師だから。
 彼が卒業しても、教師だから、彼の幸せを願うのは当たり前で、彼の笑顔を見たいと思うのは当たり前で…

『幸せになれ…担任』

 差しさわりの無い会話。
 料理は止めとけ…だとか、掃除が出来るのか…だとか、顔が崩れている…だとか、酷い事を色々言われて…
 どのくらい、話していたのだろう。
 時計の鐘が時を告げ、式までの時間はあと僅かで…
 じゃあ…と去っていく彼の背中を見送って…

『……っ』

 一瞬…だった。
 振り返り、腕を伸ばされ、抱きしめられて。
 皺を刻むウエディングドレス。
 床へと落ちた薔薇の花束。
 相手の胸に押し付けられる頬。
 耳のすぐ横で聞こえる…これは…この、声は…

『…行くな』

 囁き。
 懇願。
 キシリと背骨が悲鳴を上げる。
 苦しいほどに抱きしめられ、縋りつかれ、今日の今日まで告げられなかった、たった一つの想い。
 見ないフリをして、気づかないフリをして、自分が困らないように、幸せであるようにと、我侭で自分勝手でプライドばかりめちゃくちゃ高くて、けれど、とても優しい彼の精一杯の………


「子猫ちゃん、アイツに何…言われた?」
 相変わらず銀児の体の下で組み伏せられながら、悠里は微かに笑みを浮かべた。
 あれから…自分は何も告げず…いや、告げられなかったと言う方が正しいのだが、それでも何も告げぬ自分に、翼は体を離し、部屋を出て行った。
 たった一つ。
 たった一言。
『幸せになれ』
 それだけを残して…
「私は、結婚できません」
「ダメだ」
「出来ません」
「駄目だ、それは、出来ない」
 まるで、泣きそうだ…と悠里は思う。
 もちろん、自分が…ではない。
 自分よりも体が大きくて、やろうと思えば無理やりにでも結婚できてしまうにもかかわらず、それをしない、優しい人。
 何で、自分の周りには優しい人ばかりなのだろうと、そう思う。
 酷い人なら良かった。
 傷つけても、罪悪感なんて感じずに住む、そんな人だったなら良かったのに。
 そう、今の自分のように…
「…私は、銀児さんを愛していません」
「嘘だ」
 そう、嘘。
「私は、本当は最初から銀児さんなんか、愛してなかったんです」
「…っ」
 これも、嘘。
 愛していた。
 大好きだった。
 大事で、大切にしたいと、そう思った。
 でも、これは恋じゃない。
 愛ではあっても、恋じゃない。
 きっと結婚は出来る。
 家庭も築いていける。
 大事に出来る。
 大切に出来る。
 でも、恋ではないのだ。
「……謝らないのかい?」
 低い声音。
 下から銀児を見つめながら、悠里は顎を頷くことで肯定をした。
 謝らない。
 謝る資格なんてない。
 傷つけてしまった彼に許されたいだなんて思わない。
 思ってはいけない。
 だから…
「謝りません」
 嫌えばいい。
 憎めばいい。
 きっと、自分はそのたびに、自分のした事を思い知り罪悪感に苛まれるだろうけれど、でも…
「私が…必要としているんです」
 誰を…と、言わなくてもきっと相手には伝わるだろう。

 扉の前で擦れ違った翼と銀児。
『子猫ちゃん、今、翼が…?』
 無意識のうちに零れ落ちた涙。その意味を、きっと彼は気づいているから。

「坊ちゃまに、悠里が必要…とは言わないんだな」
「…言いません」
 必要なのは自分。
 彼の側に居たい。
 彼を見ていたい。
 彼を悲しませたくない。
 彼を幸せにしたい。


 例え、誰を、犠牲にしたとしても…


 落とされるため息。
 諦めたように浮かぶ笑み。
 緩まる腕の力と、離れる…体。


「ぁ~あ、負け、負けだよ。銀ちゃんの負けだぁ~いっ。まぁったく、子猫ちゃんったら頑固だしさ~。本当…まったく………」
 肘をつけて体を起こす。
 座り込む彼の表情は、伏せられているせいで見る事は出来ず…だが…
「さっさと行けよ。んで、坊ちゃまを幸せにしてやってくれ。俺はすっげぇ不幸せだけど~…でも、まぁ…教師だからさ。生徒の幸せ…願うしかないじゃん?」
「………銀児さん」
「違うだろ?……葛城、先生だ」
 ゆるりと上がる顔。
 いつものように、いつも以上に、笑みを浮かべ…
「行ってやれよ。坊ちゃまの所に…さ」
 伸びる腕。
 背を押され、立ち上がる。
「………」
 唇を開き、告げそうになる言葉を唇を噛み締め心に留め…
「行ってきます」
「オウ。でも、いつでも坊ちゃまが嫌んなったら戻っておいで~」
 ひらんひらんと振られる手の平と声を背中で聞いて、悠里はその場を後にした。
 行く先なんて決まっている。
 待ってなんていないだろう。
 望みなんて持っていないだろう。
 だからこそ…
「あんな顔…もう、させないんだから」
 震える口角を無理やり上げて、ただ一人だけを想い前へと進む。
 決して…そう、決して振り返らぬよう、拳を強く握り締め…


 
===========================
あとがき。

このお話しは、実は全、書き終えていた品物を読み返していたら、あまりにも出来上がりが酷すぎたため、リニュした作品だったりします。以前のはこの続きまで書き終わり、更におまけまで書き終わっていたのですが、諦めました。あれは本当に酷すぎたので…orz
というわけで、T6ルートにもかかわらず、B6補完計画に走った朱音です。こんばんは。
……だ、だってっ、あまりにも銀児ルートの翼が可哀相でっ、切なくてっ!これはもう補完するしかないでしょうとっ!
翼には悠里が居ないとだめなんだよっ!とっ!!!!
機会があったら、翼視点でも書きたいと思いました。…てか、銀児さん視点のオマケはそのうちアップします。むしろ、それが一番お気に入りだったりします。(酷)

………ちはや様、原稿用の翼×悠里、諦めていいですか?(ここで聞くな)

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COMMENT



アズサ様、ちはや様へ。

2008-05-01-Thu-06:00
アズサ様へ。

アズサ様、おはようございますーっ。そして、今回も、お話を読んでいただき、真に真にありがとうございますっ。
そうなんですよ。銀ちゃんは、基本イイ人なんですよね。絶対、好きな人とか出来たら、「葛城君っていい人だよね」とか言われてしまうタイプなんですよね。
今回のお話しは、どうしても翼と悠里をくっつけたかったために銀ちゃんが犠牲となってしまいましたが、銀ちゃんは銀ちゃんで幸せになって欲しいとも思っております(本当ですよ?)
他のキャラ視点は追々アップしていきたいと思いますので、また、出来上がりましたら読んでいただけたら嬉しいです。
ではでは、コメント、本当にありがとうございましたーっ。




ちはや様へ。

ちはや様、おはようございますー。…て、PCがっ!!うわぁ、いきなり電源落ちてしまうのは、本当勘弁…ですよね。だって、苦労して書いていた品物がいっぺんに消えてしまう、あの、恐ろしさったらっ(がくがく)
でも、大変な時にもかかわらず、読みに来ていただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます。
しかもしかも、感想までっ!メールでの感想、ばっち来いですよーっ。というか、もう、嬉しいです。でも、きっとメールよりも先に、イベントでお会いしてお話しする方が先になるかなと思ってみたり(笑)5月3日、楽しみにしております。
原稿はですね、原稿は…はい、ギリまでなんとか踏ん張りますが、出来なかったら本当にごめんなさいー。予定としては、瑞希×悠里&清春×悠里&清春+悠里前提悟郎目線みたいな感じで考えているので、また、読んでいただけたら嬉しいです。
では、コメント、本当にありがとうございましたーっ。

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2008-04-29-Tue-20:29
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2008-04-29-Tue-17:52
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