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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

pianissimo (VitaminXSS) おまけ

2008-05-12-Mon-18:02



※注意※

このお話しは、ビタエボT6(銀児ルート ドリームED)を前提としています。
ですが、銀児×悠里ではなく、銀児×悠里 前提 悠里→←翼なので、三角関係が嫌いな方。
悠里が一途でないと許せない方。銀児が悲しいのは勘弁ならないっ!方は見ない方が得策かと思われます。
それでもよろしければ、このまま↓へとオススミください。







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【pianissimo (VitaminXSS) おまけ】







「だぁーかーらぁ、聞いてるぅ?」
「はいはい、聞いておりますから。お願いですから絡まないでいただけませんか?」
 ここはとある屋台の赤暖簾の中である。
 季節外れのほかほかおでん。お決まりのように並んだ日本酒の瓶が数本。
 葛城銀司と永田は何故か仲良く隣り合って座りながら、酒を酌み交わしおでんを食べていた。
 正確には永田は飲まず、飲んでいたのは葛城一人だけだったのだが…
「だぁってさぁ、だぁってさぁ、オタクのボンボンのせーよぉ?ぁーあ、子猫ちゃん、可愛かったなぁ。あのままならさぁ、『銀司さん、愛してます』とかってぇ、絶対言ってくれたのにー」
「………言われた事が無かったのですか?」
「…ギクギクゥ」
「…………私の憶測が間違っていなければ、もしかして、南先生は最初から………」
「っ!だ、だぁってさぁ。仕方ないじゃーん。……俺だって、子猫ちゃんの事好きだし?そりゃ、最初はガーっと、盛り上がりはしたけどさぁ」
「…南先生は、お優しいですから」
「そこっ!そこなんだよなぁ」
 はぁ…と銀司の口から零れるため息。
 本日は嬉し恥ずかし結婚式。
 誓いの言葉と永遠の幸せ。もしくは、墓場が決まるめでたき日ではあったのだが、とある事情により、花嫁に逃げられ、取り戻すどころか背を押した銀司は、たまたま居合わせた永田を無理やり飲みに誘った。…という名目で攫ってみた。
 本当は…黙って、見なかったフリをして、このまま結婚生活を進めてしまえ…と思わないではなかったのだが…
「子猫ちゃんはさ、なんつーの?情…ってぇか、あまーいモンで体が作られてるんじゃないかと思うわけよ」
「人間の構成上それは…」
「だぁ~かぁ~らぁ~っ!例えだっつーの、例え!…つまり、だ。俺様の家庭の事情に同情した子猫ちゃんは、思わせぶり~な俺の態度に気になって気になって…まぁ、元から好意は多少あったんだろうが…けど、錯覚しちまったんだろうなぁ」
 コップに注がれる透明な液体。
 銀司は指先でコップを軽く押し、背を丸めながら顎をカウンターに押し付けた。
 今も、瞼を閉じれば思い出す。
 翼の卒業式。
 ヘリコプターで攫われた彼女。
 必死に扉を叩き、翼から彼女を攫い……
「最初にさ、騙したのは俺なんだよ」
 彼女の腕を引き、すがりつくようなあの眼差しから彼女を隠し、飛び降りた。
 同情か愛情か、その曖昧な境界線を持たぬ彼女に、それは愛情なのだと押し付けて。
「まぁ、アンタには解ってたとは思うけどーぉ」
 彼女が大事で諦めようとした彼と、彼女を失いたくなくて奪った自分と。
 最初から勝負なんてものは見えていたように、そう思う。
 チラリと永田を見れば、涼しい顔で『さあ?』と肩をすくめるその仕草に銀司は更に顎をカウンターに押し付けた。
「俺だってさぁ、子猫ちゃんが好きだったんだよー」
「解っております。ですが…」
 そう、だけど……
「俺はきっと、子猫ちゃんじゃなくても大丈夫なんだよなぁ」
 彼のように不器用ではない。
 彼のようにプライドは高くない。
 彼は自分を可哀相なのだと、そう言うが、それは…
「だから、自分は大丈夫だってぇ、そう言ってるようにしか聞こえねーんだっつーのー」
 だから、譲ってやるのだ。
 本当に譲りたくなかったら、自分も男だ。
 閉じ込めて、彼女が自分に振り向くまで…それこそストーカーになるくらいまで纏いつくぐらいの意気込みは見せる。
 なんせ、恋ではなくとも、好意は持たれているのだから。どこに諦める理由があろう。
 だが…
「教師なんてなるもんじゃ無かったぜ」
「それが、現理事長のお言葉とは思えませんが」
「いいのー。だって今は、酒の席だし。それに…」
 それ以上は言葉を繋げず、銀司はゆっくり背を伸ばす。
 暖簾の隙間から見える空は、昼間の暑さの名残だろう。小さな星が瞬いて。
「…幸せになれよ?」
 届かぬ声を風に乗せ、銀司は再びコップを手に取った。
 注がれる酒。
 浮かぶ笑み。
 これっぽっちも色気はないが、今回の事をタテにして、翼に奢らせるのも悪くない。
 そう思った初夏の夜。



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