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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

夜霧。

2008-05-30-Fri-16:23




 守護者としての義務であるならば、これほどまでに悔しくはなかっただろう。
 守護者としての義務だけであるならば、これほどまでに優しい気持ちにはなれなかったのだろう。





「拓磨……逃げなよ」

 白い月。
 白い…白い月。
 足元に留まる影。
 月明かりのせいだけではないのだろう。血の気の失せた、少女の表情。
 必死に笑みを浮かべようとしながらも、その眼差しは不安に揺れて、それでも『側に居て欲しい』とは告げずに逆の言葉を口にする。
 あれから…そう、あれから…
 ロゴスに破れ、己の無力さに歯噛みして、ずっと…ずっと、自分の存在意義を見失ってきた。
 自分達は封印を守るべきもの。
 目の前に敵が立ちふさがれば、それと戦い、玉依姫を守るべきもの。
 例え、それで命を失ったのだとしても、それは仕方がない事なのだと、自分はずっと教えられてきたし、そのつもりでもあったのだ。
 命など惜しまない。
 自分達はそのために居るのだから…と…
 だから、正直…こう言ってしまえば、きっと目の前の少女は怒るのかもしれないが、それでも、あの時、自分は確かにロゴスに殺されても良いと、そう…思っていた。

 なのに……

「私は、誰にも言わないよ。誰にも、何も言わせないよ」

 続く言葉。
 必死に笑みを作り、早い口調で言葉を繋げ。

 静かな境内に、少女の声と、申し訳なさそうな虫の音色が僅かに混じる。

 義務だけであるならば、こんなにも悔しい思いはしなくて済んだ。
 義務だけであるならば、こんなに優しい気持ちを持つ事は無かっただろう。


「…馬鹿だな」
 囁きと共に零れる声。
 少女の耳には届かなかったのか、俯き、更に『逃げなよ』とその口は言葉を紡ぐ。

 逃げるはずがない。
 逃げられるはずがない。
 目を閉じても思い出されてしまう。
 小さな少女の背中。
 両腕を横に伸ばし、けれど、すぐに解るほどに、その体は大きく震えていた。
 命のやりとりなんてした事は無かったはずだ。
 喧嘩ですらした事が無かったのかもしれない。
 それでも、つきつけられた使命を受け入れて、自分達を必死に守ろうとして…


 拓磨はそっと腕を伸ばしかけ、だが、その指は少女に届く前に下へと落ちる。
 愛しいと思った。
 守りたいと思った。
 それはきっと、今までとは違う。
 もっと…そう、もっと…


 少女の眼差し。
 届く声。
 浮かぶ笑みに……




 それがただの儚い夢だと知りつつも、縋りつき求め叶えてやりたいと、確かにその時、拓磨は想った。



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あとがき。

拓磨研究中SSその2です。
というか…あれですね、本編中のこう、守護者の心境はとても気になったりします。
この時、こう思っていたんじゃないか、こんな風に考えていたんじゃないかと、妄想してはにやにやします。
この時の拓磨は、すごく…すごく優しい気持ちだったんじゃないかなと。己の気持ちを認め、納得し、だからこそ、珠紀を守りたいと。守護者でありたいと、そう感じていたと…勝手に思っていたりいたり…
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