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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

結末のはじまり。(遥か4:柊)

2008-07-04-Fri-15:17





【結末のはじまり】

(遥かなる時空の中で4:柊)











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 それは、幼き少女にとっては言霊にすらならぬ、ただ、口から零れ出た音だったのかもしれない。
 龍が見えぬと泣き。
 声が聞こえぬと嘆き。
 見る事が出来、聞くことさえ出来れば、母の愛情が己に向くのだと、そう信じ……



 剥き出た岩肌。
 常世へと続く暗い道。
 平坂を柊は前を見据え歩いていた。
 先ほどまでの己の目に残っていたのは、頂に冠を被り、人々を見下ろし、人々を魅了する笑みを口元に浮かべ、王という頂点に上り詰めた少女の姿。
 この世界を蝕む黒龍を倒し、世界に平穏を取り戻し…
 数ある既定伝承が紡ぐ物語の行く末。その一つ。
 一の姫が望み、羽張彦が望んだ。
 そう、人々が生き残る数ある道。
 だが、柊は平坂を歩き、再び始まりへの時に続く道を歩いていた。
 決して平和な世界を否定したいわけではない。
 むしろ、この世界は自分達が進むべき道だったはずだ。
 だが…

『貴女に龍の姿を。龍の声を…』
 小指を繋ぎ、言葉を紡ぎ、涙に濡れるその眼差しを真っ直ぐ見つめ、確かに自分は少女に誓った。





 かつて、一の姫、羽張彦と共に黒龍との戦いに赴いた。
 既定伝承の存在を信じず、人の手で未来は変える事が出来るのだと、驕り、結局の所、二人は失い己も片目を失った。
敗れ、傷つき、国へと戻った自分に呪詛のように向けられる言葉。
だが、柊にとってはそんな事は正直どうでも良かったのだ。
どれほど赤の他人が自分の存在を蔑もうが、どれほど一の姫を隠した自分に憎悪をぶつけられようが。
真実など、自分だけが知っていればいい事で、大切なのは、今では無い遥か未来、黒龍を倒す事。ただそれだけで…

 けれど…


『柊』


 それは愛しい少女の声。
 青い眼差しを悲痛に歪め、片目を失った己に近寄り、姉はどうしたのかと問い詰めるよりも先に、頬を包み、涙を零した。
 そう、きっと少女はただ寂しかっただけだ。
託された弓を両手で抱え、姉の存在をその眼差しで探しながら、けれど居ない事を悟ると、ただ、真っ直ぐに柊だけを見つめ…

『柊が戻ってきてくれて、良かった…』

 あの瞬間、自分は確かに救われたのだ。
 例え、それが見つからぬ少女の姉の代わりなのだとしても、誰からも告げなかった、たった一言。
 生き残り、進むべき道は解っていたのに、それでも後悔は消えず、二人に準じる道を選び取ろうとすらしていた自分を繋ぎとめ、だからこそ………

「貴女に、龍の姿を、声を、存在を……」

 少女は常に怯えていた。
 少女は常に欲していた。

 力を、愛を、想いを、貪欲に求め、与えられぬことに嘆き、それでも、前を見つめ、自分を救い、皆を救い……


 ふいに、闇に浮かぶ光の点。
 近づくたびに大きくなるその色の先に、かつて、自分が見た景色が見えた。
 自分の知る世界ではなく、けれど、成長した、自分を覚えていない少女が存在するその世界。
 だからこそ…

 腕を伸ばし、岩へと当てて、更に進んだ一歩と共に頬を撫でる風に瞳を細め………



 繰り返される既定伝承が紡ぐ物語は、たった一つの結末のみを求め、さ迷い歩く。


 そう、龍が織り成す、ただ一つの物語だけを求め…



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あとがき。

はい。捏造です。柊は幼い千尋と龍を見せると約束していたらいいなぁと思って書きました。
どちらかというと、千尋(ほのかな恋心)→柊が理想です。
何度も書きますが、遥か4は本当、SS難しい……かける方、尊敬ですね。本当。
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