fc2ブログ

朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

ひとしずく。

2008-08-19-Tue-23:37





【ひとしずく。】

(遼×珠紀)


※注意※

このお話しは、緋色の欠片3 蒼黒の楔を前提としてお話しになっております。
それでもよろしければ、↓へとお進みください。






=========================


「なぁ、遼」
 月明かりの下。
 光に照らされ、風に吹かれ、周囲の竹が波のように音を立てる。
 そこは、巨大な岩があり。
 そこは、遼と…そして、父親の秘密の場所だった。
 母親ですら知らないその場所は、ふらりと出かけた父親の後をつけ、偶然見つけた場所でもあった。
 驚き、しまったというような顔をして、それでも…『母さんには秘密だぞ?』そんな風に笑いながら、男の約束をしたように覚えている。
「何だよ、親父」
 これは夢だと、遼は解っていた。
 あの時。
 父と共に空を見上げた。
 その日は満月で。
 家に帰れば、母親が夕飯の支度をしているのだろう。
 幼い遼は父親を見上げ、『父さん?』そう、言ったはずだった。
 だが…
「大きくなったなぁ」
 伸ばされる手。
 髪に触れた指。
 かき混ぜるようになでられて、遼は思わずその手を振り払う。
 今の自分は…あの時ほど幼くは無く。
 今の自分は…あの時ほど世界に希望を持っていない。
 そう。
 この後、父親が生贄として静紀の元へ行くのを知っている。
 だが…
「アンタは、あの時のままだな」
 行くな…とも、告げずに遼は言葉を紡いだ。
 これは夢。
 過去の出来事。
 己の望み。
 だからこそ…
「そうか?年と共に色気を増すのがイイ男ってもんなんだがなぁ」
 離れる手。
 豪快に笑い、あの時と同じように、あの時と同じ笑顔で告げられる言葉。
「ほざけ」
 遼は、この存在が苦手だった。
 過去の自分は…父親が好きで、憧れて、彼のようになりたいと、そう、思っていた。
 だが、今の自分は…
「母さんが、泣いていた」
 自分は、彼のようには笑えない。
「そうか」
「…何で、行ったんだよ」
 自分は、彼のように受け入れる事など出来はしない。
「………」
 村人を恨み、玉依を恨み、己の血を恨んで、世界は敵だと思うようにした。
「逃げれば良かっただろ」
 霊力が強い彼ならば、この村から出る事は簡単…とは言えなくとも可能だったはずだ。
 自分の番が回ってくる前に、もっと前に……
「お前、馬鹿だなぁ」
「なっ!」
 捕まれる頭。
 近寄る、相手との距離。
 顔を覗き込まれ、まるで、聞き分けの無い子供にするようにその眼差しをゆっくり細め。
「俺が逃げたら、誰が母さんを守るんだ?」
「俺が守るっ!」
「ばぁか」
 ガツリ…
 音と共に額があたる。
「痛っ」
「お前が守れるわけ、ないだろう」
「俺はっ!」
「それに、この村を…誰が、守るんだ?」
「守る必要なんてっ!」
 離れる距離。
 ひりつく額。
 離れた相手の手と共に、外気の冷たさにようやく気づく。
「あるだろ?お前には」
 浮かぶのは、一人の少女。
 甘い理想を口にして。
 弱いくせに、その背に全てを背負い込み。
「………」
 誰よりも皆が生き残る道を望みながら、自分の命を顧みず。
「いやぁ、お前に彼女が出来るとは思ってみなかったんだがなぁ」
 豪快な笑い声。
「…煩ぇ」
 掠れた声が零れ出た。
 本当は……
 今でも、遼は思っている。
 大切な人だけが生き残っていればいいと。
 母親が、父親が。
 自分が仲間と呼ぶ存在が。
 自分に光を与えてくれた、たった一人の少女がいれば、それだけでいいのだと。
 なのに…
「アンタも、アイツも……」
 それでは駄目なのだと告げていた。
 この世界には、たくさんの人が居て。
 この世界には、たくさんの悲しみが存在していて。
 誰もが罪を背負い。
 誰もが涙を流している。
 涙を拭うべき手は二本しかないというのに。
 それなのに…
「無茶な事ばかりを、要求しやがる」
「悪いな。遼」
 聞こえる声に、彼を見て。
 届く音に、彼が消えたのだと理解した。

「お人よしすぎるんだよ」

 呟く声は風に消え。
 月明かりが照らす岩の元、遼はゆっくり瞼を開く。
 明けぬ夜。
 落ちぬ月。


 一滴。
 岩の上に光が落ちた。
 


======================
あとがき。

私の中のイメージの遼のお父さんは、こんな感じです。
明るくて、誰にでも好かれていて、強くて。
人が好きで、太陽のようなそんなイメージ。………ファンブックで家族の姿とか出てきたらどうしよう。
スポンサーサイト



COMMENT



コメントの投稿

HOME