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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

Blessing to you (ビタミンX:翼×悠里)

2008-09-07-Sun-02:05



【 Blessing to you 】


(ビタミンX:翼×悠里)







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「何故、俺がお前を担任と、そう呼んでいたのか解るか?」
 問われる言葉に悠里は首を、縦に振る。


 その日は、とても晴れていて。
その日は、はれの舞台に似つかわしく暖かかった。
どこからともなく流れてくる桜の花は、新たな門出を祝うかのように美しく、悠里はその花びらを視界に入れたまま瞼を閉じる。
聖帝学園卒業式。
それが、今日、この日に授けられた言葉だった。


 視界を埋める薔薇の花。
 それしか聞こえなくなるほどに大きなヘリコプターの音。
悠里は舞い上がる茶色の髪を必死に抑え、それでも視線を外さず前を見る。



プロペラがゆっくりと止まり、開いた扉から現れた彼の姿。
花びらは、翼が校庭へ降りてきた今ですら変わらず降り続け、思考全て捉えられてしまう程の甘い香り。
何かを告げられた事は覚えている。
何かを問われた事も覚えている。
そして、自分がそれに対して何と答えたのかも…
背に回された両腕。
そのくせ、壊れ物を扱うかのように優しくて。
 むせ返るほどの薔薇の臭いに酔いながら、悠里は相手の背へと腕を回した。
 告げられた言葉は嬉しくて、誓われる言葉は嬉しくて、何故、こんな想いを抱いてきたのか…教師だからと、見ないフリを決め込んでいた感情があふれ出す。
 だからこそ、続いた言葉に悠里は形の良い眉を潜め、相手の眼差しから逃れるように相手の胸へと顔を埋めた。
「…私が」
 曇った声。
 痛みを訴える胸。
 そう、何故、【先生】ではなく【担任】と呼ばれていたのか。
 過去を思い出すように記憶を辿り、同時にそれは鈍い痛みとなって胸を苛む。
 呼び方の違い。
 踏み込めない距離。
 どれほど腕を伸ばしても、まるで自分とは違うものなのだと拒絶され、そのたびに、決して口には出さないけれど、見えない心がチクリと痛んだ。
 思えば、あの時からだったのかもしれない。
 振り向かせたいと思った。
 認めさせたいと思った。
 傲慢な口調の中に、微かに見える彼の寂しさを知りたいと。
 ほんの僅か、教師の枠を超えたその想い。
 だからこそ、決して教師と認めないとでも言うべき『担任』のその単語が悔しくて…
 悠里はそっと瞼を閉じて、相手の鼓動を聞きながら、震える唇をそっと開く。
「私が、先生と呼ぶに値しないと、そう、思ったからでしょう?」
 今は違う。
 それは解る。【担任】と呼ばれていた単語は【先生】と姿を変えて、甘さが混じるその音に、幸福をひしひしと感じ取れたから。
 だが…
「…馬鹿だな」
 ふいに落ちた口付け。
 驚き見開く眼差しに映るのは、どこか照れくさそうな…嬉しそうな相手の表情。
 背に回った相手の腕に、尚も力が篭り、近づく体。
 吐息すら触れ合いそうな、まるで…そう、これではまるで…
「翼…く…」
「…最初は、確かにそうだったかもしれない。だが…」
 細まる眼差し。
 赤い眼差しに映るのは、自分の顔と横切る花びら。
「…だが、すぐに、お前は他の教師とは違うと気がついた。俺が、お前を【担任】と呼ぶ理由など、一つしかない」
 解らないのか?
 問う声に、瞼を閉じて、落ちる唇に吐息を零す。
 解らない。
 解らない。
 解らない。

 本当に?

 ……嘘。

 本当は…

「お前は、他の教師とは違う。お前は…俺の…」


 俺だけの、担任だから…


 一緒にされたくなかった。
 その他のうちの一人に混ざりたくなかった。
 己の肩書きも、財力も、それこそ容姿も関係なく、真壁 翼としてお前の側に居たかった。

 だから…

 続く言葉を唇で塞ぎ、悠里はほぅと息を吐く。
 蘇る、共に過ごした日々。
 徐々に見えてきた相手の姿。
 決して…大変じゃなかったとは言わないけれど、けれど、それ以上に胸に残る思い出は、何一つ欠ける事なく胸に留まり、そして…

「翼君」
「…何だ?悠里」
「…翼君」
「だから、何だと言っている」
「……貴方って、馬鹿よね」
「っ!?what!?何だって!?」
「うん。だから、馬鹿よね」
 零れる笑み。
 反して、不機嫌そうになる相手の表情。
 けれど、両腕は離す事なく。
 けれど、触れる体温は離れる事なく。
「…私も、本当に、馬鹿」
 呼び方一つで不安になって。
 呼び方一つで特別を作って。
 それ以上に、しなければならない事なんて、気づかなければならない事なんて、もっとたくさんあったのに。
「勿体無い事をしたって、思っているのよ?」
「た…」
聞こえる咳払い。
「せ…と、…悠里?」
 更に戸惑ったような言葉が続くのは、それは、きっと……
「でも、だから今があるのかもしれないわね」
 空に舞い上がる赤い花。
 決して離れぬ温もりを、強く、強く抱きしめて。
「もっと、翼君の事を教えてね?」
「……ああ」
「私の事も知って欲しいわ」
「解っている」
「一年なんて、あっという間ではあったけど、でも、まだまだ足りない、そんな気がするの」
「そうだな」
 こうして触れた温もり以上に、きっと自分は相手の事を知らないだろうから。
 生徒としてではなく、恋人として。
 たった一人のかけがえの無い人間として…

 そう、まずは………

「私、翼君の、トンチンカンな日本語も、結構好きよ?」
「whatっ!?トンチンカン!?誰が、商店街を練り歩いて――――」
「ちなみに、それは、チンドンヤですっ!全然違うじゃないっ!」

 止まる言葉。
 同時に響く笑い声。

 卒業式に相応しく、新たなる旅立ちに祝福を。



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あとがき。

久方ぶりのビタミンSSです。や、何でかと言うと、やっぱり執筆できていなくて、でも、アップしないのも何かなーとか思っていたら、以前書いたまま仕舞っておいたものを思い出したので…
緋色じゃなくて、本当にごめんなさい。
あ、ちなみにこれは、ED後の翼×悠里のお話です。(一応)
個人的に、翼の「担任」呼びが好きだったので、こういう裏があったらなぁという妄想もりだくさんで書いてみました。
明日の夜~明後日までは実家に帰るので、拍手のお返事はぜひとも、ぜーひーとーもーっ、明々後日にはさせていただきたいと思いますー(涙)すみませんー
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