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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

ゆめうつつ。(薄桜鬼SS:斎藤×千鶴)

2008-09-24-Wed-03:15




【ゆめうつつ。】

(薄桜鬼:斎藤×千鶴)







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 自分にとっての新撰組とは、己自身を認める場に他ならなかった。
 自分にとっての刀とは、己自身を示す物に他ならなかった。
 否定され、否定され続け、『斎藤 一』という個が存在する事が出来るのは、この場でしかない。そう、思っていた。



 夜の闇の中。
 零れ落ちそうなほどの星の下。
 息をする事すら忘れそうな静かな時のただ中で、斎藤は寝息を立てる少女へと視線を向けた。
 疲れたのだろう。
 投げ出された両足には、くたびれた草履が申し訳程度にぶらさがり、艶やかな長い黒髪は土の上へと投げ出され、細かい砂を纏っていた。
 しっかりと閉じられた瞼は、あの時…そう。隊を抜け出て、空を見上げ、語ったあの時とは違い、開かれる兆しは見えなくて。
 幾度このような夜を向かえ。
 幾度、このように少女の寝顔を見たのか。
 もう、数える事すら忘れてしまったが、それでも…

 斎藤は音を立てぬように腕を伸ばし、ピクリとも動かぬ少女の頬へ、指をそっと触れさせた。
 動かぬ体。
 開かれぬ瞼。
 零れる吐息に音は乗らず、ただただ、心地良さそうな寝息が零れるのみで。

「雪村…千鶴」

 起こそうと、思ったわけではない。
 ただ…
 そう。ただ、その存在を確かめたくて…

 夜の闇は深く。
 空には零れるほどの星が瞬いていた。
 月は雲へと隠れ、髪を攫う一陣の風。
 
 目の前には無防備に眠る少女。
 触れた肌の下には、命の源が流れている。
 舌の上で蕩け、甘く、芳しい極上の甘露。

 酷く、喉が渇いていた。
 そう、言うなれば、それは餓えとよく似ていて。
 けれど…


 大地へと落ちる月明かり。
 指先に触れる熱から逃れるように、斎藤はそっと腕を引く。
 幾度か、吸血衝動を体験した事はあった。
 狂いそうなほどの欲求。
 同時に、それを押し留める理性。
 動き出す四肢を意志の力で抑え込む。
 あの苦しみは、想像を絶していた。今も、そう、思っている。
 だが、今日のこれはそれとは違い……

「化け物…か」

 零れ落ちる声と共に、斎藤は熱の残る指先を、そっと己の唇に押し当てる。
 血の味はしない。
 血の匂いはしない。
 だが、それでも…

 酷く甘く芳しく、残る、その感触全てに餓えるその意味を、斎藤を瞼を閉じる事で否定した。


 自分にとっての新撰組とは、己自身を認める場に他ならなかった。
 自分にとっての刀とは、己自身を示す物に他ならなかった。
 否定され、否定され続け、『斎藤 一』という個が存在する事が出来るのは、この場でしかない。そう、思っていた。

 そう。思っていたのだ。少女と言葉を交わす、その時までは…




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あとがき。

らぶらぶを書こうと思ったのですが、らぶらぶとは程遠い、ちょっと痛い感じの斎藤さんになってしまいました。…というか、斎藤さんかどうかも不明なとこ…ろ(マテ)
ちょっと、今度、斎藤さんSSはリベンジさせてください(誰に挑戦)
とりあえず、吸血衝動とはまた違う衝動を感じた斎藤さんを書きたかっただけなんです。
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