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朱色の刻

ゲーム「緋色の欠片」の二次創作小説ブログです。真珠をメインに守護者×珠紀を目指しています。他にも翡翠、悠久、VitaminXなど、NLオンリー乙女ゲーム中心に書いています。

願い事一つ。(翡翠:克彦×珠洲)

2008-10-30-Thu-01:22




【願い事一つ。】

(翡翠:克彦×珠洲)


※このお話しは、翡翠の雫ドラマCD 第二弾をベースに書かせていただいた品です。
大団円ED(無いけど)のその後という設定でお読みください。









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 空に咲く華。
 大地を染める彩。
 ざわめく人の波の中を泳ぎながら、珠洲は下駄を鳴らし前へと進む。
 一際目立つ白い髪を目印に、隣ではなく僅か後方を。
 会話は…無い。
 手が触れ合う事も…無い。
 笑みを向けられる事も、もちろん、無い。
 けれど…

「ありがとう、ございます」
 囁くように言葉を発し、振り向かぬ相手に安堵する。


 一年前。
 世界の命運を分けた戦いが、この村で行われた…と、言ったなら、どれほどの人がそれを信じるのであろうか。
 後々聞いた話しによると、ここから離れた季封村という村で封印されていた刀が解放されたため、溢れ出した邪気の影響をこの村…正確には、神、そして眠っていた豊玉姫が受けた事が原因だったらしい。
 だが、きっかけはどうであれ、あれは無くてはならない闘いだったのではないかと、珠洲は最近、ようやく、そう思うようになっていた。
 邪気の影響を受けなければ、母は死なずにすんだ。
 真緒も豊玉姫にならなくても良かったのかもしれない。
 けれど…

 珠洲は浴衣の袖に隠れそうになる掌を握りこみ、いつの間にか止まった足に気付かず、そのまま俯き、唇を噛み締める。
 それでも、いつかはきっと封印は解かれ。
 竜神は解放され。
 母は玉依姫の役目を果たし、真緒は自分の前から去っていっただろう。
 今ではなく、そう、いつか…
 何十年後かもしれないが。

 細く、細く吐き出す吐息。
 祭の最中に考える事ではない。
 解っている。
 それでも…
「…おい」
 ふいに聞こえた声に、珠洲は慌てて顔を上げた。
 いつの間にか近づいた距離。
 先ほどまでは髪しか見えなかったにもかかわらず、瞳に入るその姿は自分を見つめ、不機嫌そうに眉間に皺を寄せており。
「か…つひこさん?」
 問う声に、更に眉間の皺が深くなる。
 そこでようやく、自分の足が止まっていた事に気がついた。
 考え事をしすぎて、足にまで意識が回っていなかったらしい。
 彼が弟である小太郎と共にこの村に来てくれたのは、つい先日で。
 表向きは守護者としての祭の警護。
 でも、本当は、ただ単に、珠洲が克彦と共に祭を楽しみたかっただけなのだ。
 そのためだけに、大義名分を準備して。
 くどいほどに手紙を送った。
 一年前、この村に訪れた、愛想が良いとは言えないこの人は、決して自分を好きでないだろうと解っていたが、それでも、気になって…とても気になって。
 妹かもしれないと知らされた時には、とても嬉しくて。
 けれど、ただの他人で。
 冷たい口調。
 攻撃的な眼差し。
 痛みを伴う会話。
 それでも、時折…自分に向けてくる眼差しはとても優しくて。
 押し付けるようになってしまった守護者の役割を、それでも、最後は受け入れてくれていて。
「お前は、まともにすら歩けないのか」
 呆れたような声に珠洲は違うと言うように首を横に振る。
 心許した人にはとてもとても優しい人。
 自分がその内に入れないのは悲しくはあるけれど…
「すみません。すぐに…」
 でも、相手には関係の無い事だから。
 自分が相手の信頼してもらえるようなそんな人間になればいい。
 来てくれただけで嬉しい。
 共に、こうして祭を歩いてくれるだけで嬉しい。
 立ち止まった自分に気付き、声をかけてくれるだけで嬉しい。
 それ以上は望まない。
 そして、望めない。
 だから…
「おい、どこに行く」
 再び歩き出そうとした足を止めるように、かけられる声。
 更に眉間には皺が増え、もう既に数える事が辛くなるほど相手の機嫌は悪そうで。
「どこって……」
「うろちょろしすぎだ。玉依姫が迷子か。随分といい身分なものだな」
 確かに、このまま進めば克彦を置いていくことになるだろう。
 だが…
「でも、前に進まないと」
「一人で行くなと言っているんだ」
「はい?」
「…小太郎もよく迷子になっていたからな」
「あの?」
「耳まで悪くなったのか?」
「いえ、耳は通常ですが…」
 瞬きを一度。
 止まった姿勢のまま相手を見つめ。
 そのまま視線は下へ下へと。
「あの?」
 問う声に相手の声は聞こえない。
 だが、代わりに…
「克彦さん?」
「迷子になっては困るだろう?」
「………」
 そして、視界に入る………
「早く取れ」
 白い指。
 つまりこれは、繋げと…言っているのだろうか。
 相手の真意を図るべく顔を上げれば、気のせいだろうか。
 白い、白い相手の頬がうっすらと赤く…
「さっさと行くぞ」
 声音は変わらず、だが、心持ち早い口調。
 握るより先に握られて、動き出す景色。
 早くなる鼓動。
 足元で下駄が鳴り、そして…


「…ぁあ、綺麗だな」

 耳に届いた声と共に、頭の上で華が爆ぜた。

 一年前。
 この村で世界の命運をかけた戦いが行われていた。
 原因はここから離れた季封村という村にあった刀の封印が解けたためらしい。
 だが、きっかけはどうであれ、あれは無くてはならない闘いだった。
 世界の歪みを直すため。
 そんな正義は正直、自分にとってはよく解らない。
 ただ…
 あの戦いを経て手に入れたものがある。
 それは、世界の平和と比べてしまえば取るに足らなくて、本当に…本当に自分勝手な欲求で。

「きれい、ですね」

 空を見上げず、珠洲は呟く。

 そう、ただ、自分は…
 世界の平和よりも、母の命よりも。
 ただ一つ…
 仲間が居る、今の世界以外は欲しくなかった。




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あとがき。

薄桜鬼でも緋色でもなく、翡翠になりました。ドラマCDを聞いた影響ですね。間違いなく。
最初考えていたものよりも、ちょっと珠洲がシリアス風味になりました。最初はラブラブのはずだったんですが…ね。
珠洲の口調が微妙なのは、ゲームをせずに書いてしまったためです。(あわわ)
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